「大麻」とは「大いなる麻」の略語です。良質の繊維や油が取れ、医療分野でも活用が期待されています。

第9回公判 -中山康直氏による最終意見陳述陳述 - 中山大麻裁判

【中山大麻裁判】第9回公判

2013年(平成25年)2月27日午後1時30分から5時まで、東京地方裁判所で中山大麻刑事裁判(大麻草約27、509グラムの所持)の第9回公判が行われました。
弁護人の証拠の追加請求、検察官の論告と懲役1年の求刑、弁護人の弁論、中山康直さんの最終意見陳述が行われました。


弁護人による最終弁論内容

平成23年特(わ)第2432号 大麻取締法違反被告事件
被告人 中 山 康 直

弁論要旨1

(大麻取締法の違憲性)

平成25年2月27日 東京地方裁判所 刑事第10部 御中

主任弁護人 丸 井 英 弘
弁護人 森 山 大 樹

はじめに

1。大麻取締法の根本的問題点と日本人のアイデンティティ
 大麻草(以下大麻と呼ぶ場合もあるが同じ植物である)とは、縄文時代の古来から衣料用・食料用・紙用・医療用・儀式用に使われ、日本人に親しまれてきた麻のことであり、第二次大戦前はその栽培が国家によって奨励されてきたものである。昭和12年9月には麻の産地である栃木県で「大麻の研究」という本も出版されている。そして、栃木県の小学校の校歌では、次のような、「麻のように真直ぐな人間になれ」と歌われてきた程です。
「 鹿沼の里に もえいでし  正しき直き 麻のこと  世の人ぐさの鏡とも  いざ 伸びゆかん ひとすじに 」

 弁護人丸井の法律事務所は東京都国分寺市にあるが、国分寺は昔武蔵野国の時代に多麻と呼ばれた地域であって、麻の栽培が多く行なわれていたとのことであり、近くには多摩川が流れている。多摩川とは麻が多く栽培されている川という意味で、多摩川べりには川崎市麻生区という地名も残っている程である。大麻つまり麻は武蔵野国の特産品であった歴史があり、調布という地名も麻布に関係しているものである。また弁護人丸井は名古屋で生れたが、私および三人の弟は麻模様の産着で育てられたのであり、大麻との強い縁を感じている。

京都にある麻製品を扱う「麻にこだわる麻の館、麻小路」という店のパンフレットでは次のように 云っており、麻がいかに素晴らしいものであるのかがわかる。
『魔除けの麻幸せを呼ぶ麻』古来から「麻」は神聖なるものとして取り扱われてきました。今は、昔、天上より麻の草木を伝って神々がこの地上に降り立たれたとされ、今日でも神社、社寺、仏閣で、特に魔よけ、厄除け、おはらい等に種々用いられております。特に魔よけとして縁起物にはよく使われております。「麻」の育成が素晴らしく速く、その成長が発展、拡大にもつながり大きく根を張ることも含めて、商売繁盛、事業発展、子孫繁栄にも根を張るとして、縁起物で重宝されております。事ある毎に「麻」にふれる機会の多い人ほど幸せ
であるといわれております。粋をつくした「麻製品」色々取揃えております。四季を通じてお楽しみ下さい。』

 そもそも大麻とは神道において天照大御神の御印とされ、日本人の魂であり、罪・けがれを払う神聖なものとされてきたのである。天照大御神とは、生命の源である太陽すなわち大自然のエネルギーのことであり、大麻はその大自然の太陽エネルギーを具体化したものであって、日本人の魂とは、麻に象徴される大自然のエネルギーのお陰で生かされているという心のあり方を云うのではないかと思う。
 大麻は天の岩戸開きの際にも使われているし、最近では新天皇の即位に際して行なわれた大嘗祭において、新天皇が使用した着物も麻で織られているのである。この麻の着物は「あらたえ」と呼ばれているが、徳島県に住む古来から麻の栽培・管理をしてきた忌部氏の子孫によって献上されたものである。
 2600年前にかかれた旧約聖書エゼキェル書でも主たる神創造主ヤーベの言葉として次のように述べており、麻の着物「あらたえ」を大嘗祭で天皇が使用したのと同様に、旧約聖書の世界でも麻の着物が神聖なものとされてきたことが明らかである。『旧訳聖書』(日本聖書協会発行/p1213,p1214)
「しかし、サドクの子孫であるレビの祭司たち、すなわちイスラエルの人々が、私を捨てて迷った時 に、わが聖所の務を守った者どもは、私に仕えるために近付き、脂肪と血とを捧げるために、私の前に立てと、主たる神に云われる。すなわち彼らはわが聖所にはいり、わが台に近づいて私に仕え、私の務を守る。彼らが内庭の門に入る時は、麻の衣服を着なければならない。内庭の門および宮の内で、務めをなす時は毛織物を身につけてはならない。また、頭には麻布の冠をつけ、腰には麻布のはかまをつけなければ
ならない。ただし、汗の出るような衣を身につけてはならない。彼らは外庭に出る時、すなわち外庭に出て民に接する時は、務めをなす時の衣服は脱いで聖なる室に置き、ほかの衣服を着なければならない。これはその衣服を持って、その聖なることを民に移さないためである。」
 
 このような罪・穢れを祓うとされた神聖なる大麻が、第二次大戦後の占領政策のもとで犯罪の対象物とされてしまったのである。 
 占領政策の目的は、日本の古来の文化を否定し、アメリカ型の産業社会を作ることにあったと思われるが、日本人にとって罪・穢れを祓うものとされてきた大麻を犯罪として規制することは大麻に対する従来の価値観の完全なる否定であり、極めて重大なことであると思う。
 
 弁護人丸井は1944年(昭和19年)生まれであり、アメリカの影響を受けた戦後教育を受けたが、日本の良き伝統に対する教育を受けなかったために、日本人としてのアイデンティティを充分に確立することができなかったように思う。
 日本は、明治維新によっていわゆる近代化の道を歩んだのであるが、特に第二次世界大戦後は、戦後生活の建て直しということもあり、物中心の競争原理に立った経済活動を優先してきたと思う。また、生活習慣も、例えば、食生活が米からパンに変わり、畳の生活も椅子の生活に、薬の分野でもいわゆる化学的合成薬が取り入れられ、従来の東洋医学は軽視されてきたのである。大麻は薬用として何千年も使用され、日本薬局方にも当初から有用な薬として登載されていたのかかわず、大麻取締法の施行に伴って薬局方から除外されてしまったのである。
 
 人間は、植物を初めとする自然の恵みの中で生かされているのであって、日本人の伝統の中には自然を聖なるものとして大切にしてきたものがあった。しかし経済復興の名のもとに、例えば大規模なダムや原子力発電所の建設等自然生態系とそこに住む人々の生活を破壊する経済開発が国策として進められてきたために、川や海そして大気は汚染されてしまったのである。また、精神面でも、生活の中心が他者との競争関係に立った上での物質生活の確保にあったために、心の根底に不安感と孤独間を抱えたままの精神生活をしてきたと思う。
 「人はどこから来てどこへ行くのか」というのが人生の大問題であるが、どこからきたのかもわからずどこへ行くのかもわからないのでは人生の生きがいがわからないということになる。まさに「人はパンのみにては生きるにあらず」とは聖書の言葉であるが、この意味での人生に対する良き信念が、大自然との融合的生活という過去の良き日本の伝統が切断されたことによって、無くなってしまったのではないかと思う。
 大麻取締法は、日本人にとって、大自然のシンボルであり罪・穢れを祓うものとされてきた大麻を、聖なるものから犯罪にしたものであって、まさに日本人の精神を根底から否定するものである。それは例えば日本人に英語のみを話すことを強要するのと同様な日本文化の否定であり、さらに大麻の持つ産業用や医療用の有効利用を妨げているものである。

2。大麻の取扱いは果たして刑事罰で取締まるべきものなのか?
 大麻取締法は、大麻の取扱について免許制度を採用し、懲役刑という刑事罰でもって無免許の取扱を禁止している。大麻の取扱をなぜ禁止しているのかについて、大麻取締法は何らの目的規定を置いていない。このように目的規定のない法律はそもそもその存在理由が不明確であるから、人権保障を基本理念とする民主主義社会においては無効とされるべきである。
 
 厚生労働省・警察等取締り当局や裁判所は、大麻取締法の目的は、「大麻の使用による国民の保健衛生上の危害の防止である」と説明している。しかしながら、「国民の保健衛生上の危害の防止」という抽象的な疑念を刑事罰の目的つまり法律で保護される利益(法律学上は保護法益といわれる)とすること自体、人権尊重を基本理念とする近代的法体系にはなじまないものである。刑事罰特に懲役刑は、人の意に反して身体の自由を束縛し、労働を強制するのであるから、それを課される者にとっては、人権侵害そのものであるので、刑事罰の適用は必要かつ最小限にするべきである。
 大麻の使用が、どのような保健衛生上の危害を生じるのかについて、過去の裁判所の判例は、大麻には向精神作用があり、精神異常や幻覚が生じるとしているが、そこでいう精神異常や幻覚の内容については、例えば時間感覚がゆったりする、味覚・聴覚・視覚などの感覚が敏感になる(つまりよくなる)ということであって、刑事罰でもって取締まらなければならない反社会的な犯罪行為とはまったく言えないものである。
 
向精神作用自体が危険であり、犯罪であるとすれば、アルコールの有する向精神作用(いわゆる酔いの作用)は大麻と比べ格段に強いものでありアルコールを大麻以上に厳しく取締まらなければならなくなる。また、そもそも人間は自らの体内で向精神作用を有する神経伝達物質を生産するのであり、例えば何かに集中したり、恋愛中であったり、また、大麻取締法違反等刑事事件で逮捕されたりしてショックを受けるとアドレナリンやドーパミン等いわゆる脳内麻薬と呼ばれる神経伝達物質を生産するのである。逮捕されること自体が神経伝達物質を生じさせるのであるから、大麻取締法そのものが、保健衛生上有害といえるのであって取締りの対象にしければならなくなってしまうのである。
 
そして判例で、大麻使用の危険性として具体的に指摘しているのは、自動車の運転のみである。しかし、道路交通法では、酒気帯び運転や薬物(これには大麻も含まれる)の影響によって正常な運転をできないおそれがある運転は、道路交通法65条・66等特別な罰則規定があるのであるから、この規制に加え、大麻の取扱を一率に刑事罰でもって禁止することは、ただ単に犯罪者の数を増やすだけである。
 弁護人丸井は、過去37年間大麻取締法違反事件の弁護活動を通じて、多くの大麻使用経験者に出会ったが、大麻の向精神作用は心身がリラックスすること、味覚・聴覚・など感覚が良くなること程度であり、具体的な弊害は発見できなかった(後程大麻に関する研究報告を紹介するが同様の内容である)。そして大麻使用の経験者には実質的にみて悪いことをしているという意識はなく、大麻取締法という法律に対し実質的な権威を感じるものは皆無である。むしろ問題なのは、実質的な権威のない法律の存在によって司法に対する信頼感が喪失し、法治主義の基盤が崩壊することである。

3。弁護人丸井は、自然生態系に沿った自給自足型・環境保全型の社会が本来の日本の社会であったと思う。そして、伝統的な麻産業を現代的に復活させることによって、石油や木材そして不必要な食料品を輸入する必要性も無くなり、農林業が活性化して自給持続型・環境保全型の社会を実現することが可能になり、自然環境も急速に回復すると思う。そして、石油化学産業や木材パルプ産業で蓄積されている技術やノウハウを麻産業に転用することは可能であり、過疎や失業問題の解決にも貢献し、さらに、数千年以上も前から 漢方薬として使われて来た大麻をハーブ・薬草として医療用に活用すれば、喘息や不眠症に悩む人たちを初め、多くの難病に苦しむ人たちを救うことができ、かつ医療費の低減にも貢献する可能性があるものである。
 
 裁判官におかれては、本件において、良心に従い、先入観を持たないで、大麻について真実を明らかにして、公正な判断をしていただくよう真心からお願い申し上げます。
 

第1。大麻取締法の違憲性1
1。大麻取締法は憲法第31条の適正手続き条項に実質的に違反し、また同法第12条の職業選択の自由や同法第13条の幸福追求権に違反する違憲立法である。
 大麻取締法は、社会的必要性が無いのに、占領米軍の占領政策として一方的に制定されたものであり、占領後の日本を石油繊維などの石油製品の市場とするために、石油繊維とその市場が競合する大麻繊維の原料となるカンナビス・サティバ・エルと呼ばれる大麻の栽培を規制したものである。従って、憲法第31条の適正手続き条項に実質的に違反し、また同法第12条の職業選択の自由や同法第13条の幸福追求権に違反する違憲立法である。
 そして、大麻取締法29条では「昭和20年勅令第542号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基づく大麻取締規則(昭和22年厚生農林省令第1号)はこれを廃止する。」と規定しているが、この昭和20年勅令第542号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令は、昭和20年10月12日に出されたGHQ(連合国占領軍—実質は占領米軍)公衆衛生福祉局のメモランダムに基づくものである(赤星証人尋問調書16頁参照)。しかしながら、このメモランダムは縄文時代の古来から衣料用・食料用・紙用・医療用・儀式用に使われ、日本人に親しまれてきた大麻の栽培の自由という基本的人権を禁止するものであるから、ポツダム宣言10項の「基本的人権の尊重が確立されるべし」に全く違反しており、そもそも無効である。この点は、大麻取締法がその出発点において正当性を有していないということを意味しており、基本的人権の擁護を任務とする司法裁判所の裁判官としては、憲法99条の憲法尊重擁護の義務からして、その当否を真剣に検討していただきたきたい。
 また、1961年の麻薬に関する単一条約の28条2項では、「この条約は、もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る)叉は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、通用しない。」とされている。大麻取締法はまさに「産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る)」の大麻栽培を原則的に禁止しているので、この国際条約28条2項にも違反している。
 さらに、1992年5月に「生物多様性条約」がつくられ、2008年10月現在、日本を含む190ヶ国とECがこの条約に入り、世界の生物多様性を保全するための具体的な取組が検討されているが、その条約2条では、「生物の多様性」とは、すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない。)の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む)とされており、大麻を規制することは、この生物多様性条約の趣旨にも違反するものである。

2。大麻草とは、日本名でいえば、麻(あさ)のことであり、植物学上はくわ科カンナビス属の植物である。そしてカンナビスには種(しゅ)として、少なくともカンナビス・サティバ・エル、カンナビス・インディカ・ラム、カンナビス・ルーディラリス・ジャニの三種類があることが植物学的に明らかになっている。各名称の最後にあるエルとかラムとかジャニというのはその種を発見、命名した学者の名前の略称であり、サティバは1753に、インディカは1783年に、ルーディラリスは1924年に発見、命名された。いずれも大麻取締法が制定された一九四八年以前のことである。
 大麻草のうち、(カンナビス・サティバ・エル)と呼ばれる種類は、日本において縄文時代の古来から主に繊維用に使われて来たものであり、特に第2次大戦前は、繊維用などに不可欠な植物として国家がその栽培を奨励してきた植物である。
 そして大麻取締法は、この衣類の生産など産業用に栽培されてきた日本人にとって貴重な植物である大麻草(カンナビス・サティバ・エル)の栽培等を規制した占領米軍による占領立法である。従って、大麻を規制する社会的必要性がまったくなかったので、大麻取締法は、その立法目的を明記していないという法律として異例な形をとっている。占領米軍は、占領後の日本を石油繊維などの石油製品の市場とするために、石油繊維とその市場が競合する大麻繊維の原料となるカンナビス・サティバ・エルと呼ばれる大麻の栽培を規制したものである。過去の判例は、大麻取締法の立法目的を「国民の保健衛生の保護」としているが、日本において、大麻の栽培使用は縄文時代の古来から行われて来たのであり、大麻取締法制定当時も含めて「国民の保健衛生の保護」上の問題はまったく起こっていなかったであるから、その解釈は間違っているものである。この点については、以下の厚生省麻薬課長の証言からも明らかである。
(弁47号証、明窓出版発行「地球維新 vol.2」70頁以下 厚生省麻薬課長証言を引用する。)

弁護人
 現行の大麻取締法ですが、途中で改正もあったようですが、これは昭和23年に制定されたものですね。
証人
 ええ、現行法は23年に制定されております。
弁護人
 それ以前は大麻規制はどのようになっていたんでしょうか。
証人
 これは私も文献的に調べる以外に手がないんでございますけれども、ずい分古いようでございまして、一番初めは大正14年に通称第二アヘン条約と言われます条約が出来まして、それで大麻の規制をしようという条約が出来ましたのを受けまして、昭和5年に当時の麻薬取締規則というものの中にこの大麻の規制が取り込まれたと。
 ですから昭和5年が一番初めということでございまして、それ以降昭和18年頃に薬事法という法律の中に法律が整備されまして取り込まれたというふうに文献は示しております。
 それ以降昭和20年になりましてポツダム省令で国内における大麻を含めまして、一切禁止の措置になったと。 それでは産業上非常に困ってしまうということがありまして、昭和22年に大麻取締規則というものが出来たと。 さらにその大麻取締規則が昭和23年に至って現行の大麻取締法というものに変えられたということでございます。
弁護人
 すると、昭和4年の麻薬取締規則は第2アヘン条約を受けてできたものであるということですか。
証人
 文献上そのような経過の記録になっております。
弁護人
 そうしますと、国内的にわが国で、当時大麻の使用によってなにか弊害というものがあったから出来たのか、それとも国際条約を批准したという関係から一応作ったのかその辺はどうなんでしょうか。
証人
 これは、多分当時国内において大麻の乱用がみられたということはなかったんではないかと思います。むしろその国際的な条約を受けましてそういう規定が出来たというふうに考えます。 」

弁護人
 昭和5年の麻薬取締規則で規制していたのはインド大麻と言われるものだけであったんではないですか。
証人 
 そうでございます。インド大麻というふうになっていたと思います。
弁護人
 規制内容は具体的にはどういう規則だったんでしょうか。
証人
 詳細については、私、記憶ございません。
弁護人
 規制内容としては、インド大麻を輸出入する場合にそれを内務大臣に届けるというような、いわば届出制のような規制じゃなかったんでしょうか。
証人
 大変恐縮でございますが、私その規制の具体的な内容につきましては............。
弁護人
 国内で栽培もしくは野生ではえておりますいわゆる麻ですけれども、これは規制の対象にはなっていたんでしょうか、昭和5年の規則では。
証人
 当時は規制の対象になっていなかったと思います。
弁護人
 ところで、昭和23年に現行法が出来たわけですが、これは具体的にはどういうようないきさつから立法されたんでしょうか。
証人
 ポツダム省令というものをうけ、22年に大麻取締規則というものが出来たわけですが、当時そういった法律を更に整備していくという過程の中で、法律化されたのではないかというふうに思うんでございますが、実はその規則ができまして、それが更に法律に形を整えられていったという過程の記録等につきまして、私今回かなりいろいろ課の者達に手伝ってもらいまして捜してみたんですが、その間の経過は記録文書上かならずしもはっきり御説明できるものが見当たりませんでした。
弁護人
 実は、私が読んだ資料の中では内閣法制局長官をされていた林修三さんが「法律のひろば」で大麻取締法の制定当時の事情を書いている文献を読んだことがあるんですが、私の記憶ではいわゆる連合国占領国ですね、GHQの強い要望で出来たんだと、日本国政府としては特別に規制するという必要性というのは特別にはなかったんだ、というような趣旨ですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
証人
 私も林修三さんという方が書かれた文章は読んだ記憶がございますが、戦後ポツダム省令等に基いて作られました各諸法令をさらに整備していくという過程の中で、大麻取締法という法律がいるかどうかということについての御議論があって法制局サイドではその必要性について若干疑問を持ったと。しかし、当時の厚生省はまだそこまでの踏ん切りがつかなかったということ、しかし今になってみるとそこまでしなかったほうが良かったんじゃないかと、いうような一つの随想といいますか、エッセイのようなものを読んだことは記憶がございます。
弁護人
 昭和20年から23年当時ですけれども日本国内で大麻の使用が国民の保健衛生上問題になるというような社会状況はあったんでしょうか。
証人
 20年代の始め頃の時代におきまして大麻の乱用があったということは私はないんではないかというふうに思います。
弁護人
 そうしますと、この大麻取締法を制定する際に、大麻の使用によって具体的にどのような保健衛生上の害が生じるのか、ということをわが国政府が独自に調査したとかそういうような資料はないままに立法されたと考えて宜しいわけですか。
証人
 これは推定するほかないんでございますが、そういう資料はなかったんではないかと。     」
 また、昭和38年に大麻取締法が従来あった罰金刑が廃止され、懲役刑も強化されたが、次に引用する前述の麻薬課長証言によっても、当時大麻使用による具体的な弊害というようなものは社会的に存在しなかったものである。

弁護人
 ところで、昭和23年の制定当時の法律ですけれども、法規制の内容としましては罰金刑というものは当初ありましたか。
証人
 ありました。
弁護人
 内容は大体どのような............。
証人
 罰金刑といたしましては、栽培等については当時の法律では3000円か5000円以下の罰金という規定があったと思います。
弁護人
 所持とか譲渡の場合も大体同じですか。栽培・所持と輸出入と分けてますね。
証人
 ちょっと、私今...........。資料は持っておりますけれども。
裁判官
 資料御覧になりながらで結構です。
弁護人
 昭和23年の現行法の制定当時の刑の内容です。
証人
 23年当時というふうにおしゃられるんですが、今私が持って参りましたのは28年の改正分以降のものですから、ちょっと正確性に欠けるかもしれませんが所持・栽培につきましては38年の改正が行われる以前におきましては罰金刑がございまして、3万円以下ということが書いてございます。
弁護人
 あと懲役としては、どのような内容でしょうか。

証人
 3年以下の懲役または3万円以下の罰金に処するという規定でございます。この際には所持・栽培・譲り受け・譲り渡しというものがその対象になっております。
弁護人
 現行は所持・譲渡・譲り受け・これは懲役5年以下ですね。栽培・輸出入が懲役7年以下というふうにかなり重くなったわけですね。
証人
 はい。
弁護人
 昭和38年に罰金刑を廃止する、かつ懲役刑についても3年以下のものを5年とか7年にするというふうにかなり厳しくされたわけですが、これはどういうような理由からなんでしょうか。
証人
 この当時の法律改正の背景と致しましては、昭和30年代末期にわが国では御存知のとおり、ヘロインを中心と致します薬物乱用がずい分はやりまして非常に深刻な社会問題として受けとめられていた状況がございました。それで当時の状況を記録によって見てみますと、実にさまざまな対策がこのヘロインといいましょうか麻薬撲滅という観点から行われているわけですけれども、その一環として麻薬取締法の改正も行われました。罰則の強化だとか中毒患者につきましての措置入院の制度も作られるというような方策も講じられております。
 で、当時合わせて大麻取締法も改正されておりますが、私思いますのには、当時のそういった麻薬を中心とする薬物乱用状況という物を背景にいたしまして、わが国から薬物乱用の問題を一掃しようという一種の国民的な世論の盛り上がり、そういう背景のもとに関連法規である大麻取締法についても罰則の強化がはかられた。
 当時は、大麻の乱用事例というのは私はそう多くはなかったと思いますが、罰則を強化することによって薬物乱用を一掃しようということで、この法律改正がはかられたというふうに考えます。
弁護人
 そうすると、昭和38年当時に大麻使用による具体的な弊害というようなものはあったんでしょうか。
証人
 具体的な弊害がどの程度あるかということについては私は承知しておりません。     」

3。大麻草は日本人の国草である。(弁48号証「大麻草解体新書」64〜65頁)はじめにで述べたことと重複する部分もあるが、極めて重要なことであるので再度補充をして述べる。
 大麻草つまり大麻とは、縄文時代の古来より衣料用・食料用・紙用・住居用・燃料用・医療用・祭事用・神事用に使われ、日本人に親しまれてきた麻のことであり、第二次大戦前はその栽培が国家によって奨励されてきた重要な植物である。このように大麻草は精神的にも物質的にも、日本人のシンボルともいえる植物であり、桜が日本の国花とするならば、大麻草つまり大麻は日本の国草である。
 第2次大戦前の日本人の生活、特に明治以前の生活では、生まれる時のへその緒は麻糸で切り、赤ちゃんの時は麻のように丈夫にすくすく育つようにとの親の願いから麻の葉模様の産着で育てられ、結婚式では夫婦が末永く仲良く幸せであることを願って夫婦の髪を麻糸で結ぶ儀式をしていたのである。そして、葬式で着る衣は麻衣であった。日常生活では、麻の鼻緒で作った下駄を履き、麻布でできた着物(なお、下着は褌であり江戸時代以前は麻布が使われ、成人式の記念に親から褌祝いとして麻褌が与えられたようである)を身に付け、麻の茎の入った壁や天井に囲まれた家に住み、麻糸で作った畳の上で過ごし、夏は麻糸で作った蚊帳で休んでいたのである。また、麻の油は食用や灯油として活用された。また、麻糸は漁業用の網としても多く使われたが、凧糸や弓の弦としても使われたのである。麻の茎も炭にして、花火の原料としても使われた。
 このように、大麻草つまり大麻は、伝統的な日本人の生活にとって必要不可欠な植物であったのである。そして、伊勢神宮のお札のことを神宮大麻というが、大麻は天照大御神――つまり太陽――の御印とされている。そして、日本の国旗の日の丸は太陽のことであるから大麻草は日の丸つまり日本の象徴ともいえるのである。なお、大麻は神道においては、罪穢れを祓うものとされており、大和魂ともいわれている。
 ところが、第二次大戦後のアメリカによる対日占領政策で、大麻草の栽培が一方的に規制された。占領政策の目的は、日本古来の文化を否定し、アメリカに従属する産業社会を作ることにあったと思われる。
 日本人にとって罪・穢れを祓うものとされてきた大麻草つまり大麻を犯罪として規制することは、大麻草つまり大麻に対する従来の価値観の完全なる否定である。また大麻草つまり大麻は、自給自足型・環境保全型の社会にとって極めて有用な素材であり、これを規制し石油系の資材に頼る産業構造にすることは、アメリカに経済的にも従属する産業構造への転換を意味していたと思う。
 日本は、明治維新によって近代化の道を歩んだが、特に第二次世界大戦後は、戦後生活の建て直しということもあり、物中心の競争原理に立った経済活動を優先してきた。また、生活習慣も、例えば、食生活が米からパンに変わり、畳の生活も椅子の生活に、薬の分野でもいわゆる化学的合成薬が取り入れられ、従来の東洋医学は軽視されてきたのである。大麻草は薬用としても何千年も使用され、日本薬局方にも当初から有用な薬として登載されていたにもかかわらず、大麻取締法の施行に伴って薬局方から除外されてしまった。
 日本人の伝統の中には、自然を聖なるものとして大切にしてきたものがあった。しかし経済復興の名のもとに、例えば原子力開発や大規模ダムの建設等自然生態系とそこに住む人々の生活を破壊する経済開発が国策として進められてきたために、川や海、そして大気は汚染されてしまったのである。大麻取締法は、日本人にとって、大自然のシンボルであり罪・穢れを祓うものとされてきた国草ともいえる大麻草を、聖なるものから犯罪にし、さらに大麻草の持つ産業用や医療用の有効利用を妨げているのである。

4。第2次大戦前の日本における大麻草つまり大麻の栽培風景は、1929年の第16回二科展に発表された清水登之氏の「大麻収穫」という次の絵のとおりである。清水氏は栃木県出身であり、その絵は1920年代の栃木県鹿沼地方での大麻収穫風景を描いたものである。(弁47号証「地球維新 vol.2」扉の裏参照)

大麻収穫の絵

 また、中山康直氏著の「麻ことのはなし」評言社2001年10月10日発行の46頁で農業絵図文献よりの引用で「古来から日本の各地の畑で見られた麻刈りの風景」という題で次の絵が紹介されている。

草刈りの風景

 さらに、昭和12年9月に栃木県で発行された大麻の生産発展を目的にして発行された「大麻の研究」という文献あるが、その45頁で日本における麻の分布図を引用しているがあるが、その内容は次のとおりであり、大麻が日本全国において縄文時代の古来から栽培利用されてきたことは明らかである。なお、「大麻の研究」の末尾で著者(栃木県鹿沼在住)の長谷川氏は次のように述べている。
「斯る折に本書が発刊されこの方面に関心を持つ人達に愛玩吟味されて日本民族性と深い因縁のある大麻に対する認識を新たにし、是が生産発展上に資せられたなら望外の幸と存じます。」(弁47号証「地球維新 vol.2」6〜7頁参照)

分布図

 大麻草の栽培が日本の伝統的な文化財であることは、大分県日田郡大山町小切畑で大麻すなわち麻の栽培をしている矢幡左右見さんが 1996年6月26日、文化財保存技術保持者として文部大臣から認定を受けたことからも明らかである。大山町のホーム頁でその記事の要約を次のとおり紹介している。このように、大麻の栽培者が文化財保存技術保持者として文部大臣から認定を受けているのであり、大麻すなわち麻を犯罪として取り締まることが不適切であることは、明白である。
 『 矢幡さんは、昭和6年に栽培を始め、49年から福岡県久留米市の久留米絣(かすり)技術保存会から正式な依頼を受けて粗苧の製造 を始めました。以来、矢幡さんは毎年、粗苧20Kgを出荷しています。粗苧(あらそ)とは、畑に栽培され、高さ2メートルに成長した麻を夏期(7月中旬頃)に収穫して葉を落とし、約3時間半かけて蒸し、さらにそぎ取った表皮を天日で一日半ほど乾燥 させて、ひも状にしたものです。粗苧は、国の重要無形文化財である「久留米絣」の絣糸の染色の際の防染用材として使われ、久留米絣の絣模様を出すためには欠かせないものです。しかし、栽培・管理の手間に比べて利益率が低いことから生産者は減少の一途をたどり、 現在では矢幡さん一家を残すのみとなりました。 久留米絣の模様は粗苧なしではできないといわれており、粗苧が無形文化財の保存・伝承に欠く ことのできないものであるということから、今回の認定になりました。矢幡さんは、「ただ、自然にやってきたこと だけなのに、とても名誉なことです。」と話しています。』

 また、「麻 大いなる繊維」と題する栃木県博物館1999年第65回企画展(平成11年8月1日ー10月24日)の資料集では、次のあいさつを紹介している。

「ごあいさつ

 麻は中央アジア原産といわれ、わが国への渡来も古く、古代より栽培されています。
 表皮を剥いで得られる繊維は、他の繊維に比べ強靱で、肌ざわりがよく、木綿や羊毛、化学繊維が登場するめで、衣服や漁網、下駄の鼻緒の芯縄、各種縄などに用いられてきました。その一方では麻は特別や儀礼や信仰の用具に用いられ、現在でも結納の品や神社の神事には欠かせない存在となっています。麻は実用のみならず信仰・儀礼ともかかわる、まさに大いなる繊維でした。
 ここでは、質量とも日本一の「野州麻」の産地である足尾山麓一帯で使用された麻の栽培・生産用具、麻の製品、ならびに東北地方の一部で使用された麻織物に関する用具や麻織物を展示するものです。
 麻がどのように生み出され、利用されてきたか、大いなる繊維「麻」について再認識していただければ幸いです。
 おわりに、本企画展の開催にあたり、御指導御協力をいただきました皆様にこころより、御礼申し上げます。

平成11年8月1日         栃木県立博物館館長 石川格 」

 そして、表紙の2頁目では、前述したように次の鹿沼市立北小学校校歌が紹介されているが、このような麻が第2次大戦後の占領米軍による占領政策でもって犯罪視されてしまったのである。

「 鹿沼の里に もえいでし 正しき直き 麻のこと
  世の人ぐさの 鏡とも いざ 伸びゆかん  ひとすじに 」       (弁47号証「地球維新 vol.2」213~217頁参照)

5。米軍による軍事占領下の1948年(昭和23年)7月10日に大麻取締法が制定されてからすでに64年以上経過した。そして、1950年に日本全国で25118名いた大麻栽培者は、2008年には58名にまで減少してしまった。この減少した理由は、毎年の免許更新手続きが面倒な大麻取締法による規制のためと安価で大量に生産できる石油化学繊維の台頭によって麻製品の市場がなくなったことによると思われる。
 しかしながら、大麻には、次のような有益性があるのであるから(逆に大麻にはこのような有益性があるから、日本をアメリカ系の石油系産業の市場とするために占領政策として大麻産業を規制したのが大麻取締法である)、占領政策である大麻取締法の当否を根本からみなおすべき時期に来ていると考える。

5。大麻草の有益性 (弁47号証「地球維新 vol.2」8~11頁、189~195頁参照)
 大麻草は、刑事罰で取り締まる必要がないものであるばかりか、紙用・繊維用・燃料用・食用・薬用等人類にとって貴重なる植物である。
 第二次大戦後、日本で大麻取締法の制定を強行したアメリカを初めオランダ、イギリス、ドイツ、スイス、カナダ、オーストラリア、ロシア、中国などでは、大麻を地球環境の保護や環境保全型の健康な社会を実現するための有用な資源であるとの立場から見直す動きがでているが、大麻には次のような有益性があると指摘されている。なお、アメリカでは建国当時は大麻の栽培を奨励したのであるが、1930年代になって石油系の化学繊維が開発され、大麻とその市場が競合することが大麻の禁止をした社会的背景の一つである思われる。

①大麻から繊維がとれかつ土壌を改良する働きがある  
 大麻は栽培密度と収穫時期を調節することにより、絹に近い繊細な衣類や船や工場で使うロープまで、さまざまな品質の製品が作られる。しかも大麻の栽培には化学肥料が不要で、熱帯から寒冷地、沼沢から乾燥地帯まで多様な気候・土地条件のもとで育ち、かつ大麻の根の働きによって土壌自体を改良する働きがある。
②大麻から紙や建築用材、さらには土壌分解可能なプラスチック等ができる。
 森林は人類に酸素を供給してくれるなど貴重な資源であるが、日本を始め先進国が紙や建築資材にするために森林の大規模な伐採を行なっており、地球環境の破壊が日々進行している。 大麻は一年草であり数カ月という短期間で成長し、その茎は紙の材料になったり建築用の合板に加工でき、さらには土壌に分解可能なプラスチックも出来るため、大切な森林を守ることが出来、またゴミ問題の解決に役立つものである。「独立
宣言」を起草したアメリカ初代大統領のトーマス・ジェファーソンは、自分の農場で大麻を栽培し、製紙工場も持っていた。また、「独立宣言」の起草文は、大麻から作られた紙に書かれて、アメリカの国旗や紙幣までも大麻から作られたとのことである。なお、中国にある仏教の教典も大麻の紙から出来ているのでる。また、1940年代にはフオード社が大麻の繊維分を使って鉄よりも軽くてかつ丈夫な車体の製作に成功している程である。

③大麻から燃料ができる
 大麻の茎や葉を発酵させることにより、燃料(エタノール)が出来る。また、大麻の種にもオイル分が含まれている。地球の温暖化は化石燃料(石油、石炭、天然ガス)が放出する二酸化炭素が大気中に蓄積していくために生じるといわれている。しかし、大麻を燃料用に栽培すれば、成育途中で光合成により二酸化炭素を酸素に変えるので、地球の温暖化を防ぐことが出来る。

④麻の種の有効利用
 麻の有効利用のなかで極めて注目すべきものが、種の有効利用である。
この種の有効利用については、日本ではほとんど注目されていないが、医療用・食用・燃料用など多目的に利用することができるので、今後その有効利用について調査・研究・開発をする価値が大いにあると思われる。そして、大麻はどこにでも生えるので、地球規模で生じると予想される食料不足を解決する可能性がある。
1)麻の種の成分の特徴(赤星証人尋問調書添付資料参照)
1.良質な蛋白質、必須脂肪酸を全て含む。
2. 必須脂肪酸が80%、全ての植物油の中でもっとも高い
3.リノール酸とαーリノレイ酸が3対1という理想的なバランスで含まれている。
4.不溶性の植物繊維が豊富
5.鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、リンなどのミネラルが豊富
6.ビタミンE、ビタミンKが豊富
2)麻の実は長寿食である(赤星証人尋問調書9〜10頁及び添付資料参照)
 中国広西チワン族自治区巴馬(バーマ)は世界一の長寿の里と言われている。そこでは、100歳以上の長寿者が1万人当たり3、2人(国連の長寿の里の認定基準は100歳以上の長寿者が1万人当たり0、75人)でかつ全員が野良仕事可能である。そして、その健康の原因の一つが、毎日麻の実から作ったお粥を1日30〜50グラム摂取していることであると報告されている。最近の研究では、麻の実に不老長寿成分でる活性酸素を除去する抗酸化物質「カンナビシンA」が発見されている。
 日本の平均では100歳以上の長寿者が1万人当たり3、4人であるが、その5割は寝たきりで、3割はあまり活動しないということであり、そのための介護費用や医療の負担が国家財政を危機的な状況に追い込んでいる。
 先の衆議院議員選挙で勝利した自民党の重点政策2012によれば、『日本経済の新しい姿として、まずは「国民的課題を解決し世界に展開可能な戦略目標の設定」(“健康長寿世界一”など)、さらにコア技術への集中投資、制度改革など、一気通貫の政策を進めます。』と述べているが、この重点政策を実行する具体案として、日本でも中国広西チワン族自治区巴馬(バーマ)のように、国民全体が麻の実を主食として毎日摂取するようにすれば、国民全体が健康になり医療費の大幅な削減が可能になる。またその麻の実を国内で自給するために、大麻を第2次大戦前のように日本全体で栽培するようにすれば疲弊している日本の農業が活性化し、過疎問題や失業問題そして増税問題も解決する可能性があるのであるから、是非とも政府の責任において大麻の栽培を復興していただきたい。
⑤大麻から医薬品ができる。
 古代から人類は、大麻を安全な医薬品として使用してきた。喘息、緑内障、てんかん、食欲減退、憂鬱などに効果があるほか、ストレスの解消にもなる。日本でも印度大麻煙草が、喘息の薬として、明治以降第二次大戦後まで市販されてきたが、格別の副作用や弊害は何ら報告されていない。小林司氏は別添『心にはたらく薬たち』一九二頁~一九三頁の中で大麻の治療効果について次の様に述べている。
「一八九五年(明治二八年)一二月一七日の毎日新聞にはこんな広告がのっている。『ぜんそくたばこ印度大麻煙草』として『本剤はぜんそくを発したる時軽症は一本、重症は二本を常の 煙草の如く吸ときは即時に全治し毫も身体に害なく抑も喘息を医するの療法に就て此煙剤の特効且つ適切は既に欧亜医学士諸大家の確論なり。』 日本薬局方にも印度大麻として載っていたくらいだから薬効があると考えられていたに違いないが、大麻は本当に薬効をもっているのだろうか。
 一九七四年には、フレデリック・ブラントンが大麻を使って眼内圧を下げ、緑内障の治療をした。二年後には、ミシシッピー大学でも、緑内障に有効なことが確認され、フロリダ、ニューメキシコ、ハワイ、インディアナとイリノイの各州では、マリウァナを医学に使うことが合法化された。また、その後ガンに対する化学療法に伴う副作用としての嘔吐を抑えるために、大麻が一番有効なことが確認されている。
 米国保健・教育・福祉省の『マリウァナと健康』第五リポート(一九七六年)によると、マリウァナは、眼内圧降下、気管支拡張、抗けいれん、腫瘍抑制(抗ガン作用など)、鎮静睡眠、鎮痛、麻酔前処置、抗うつ、抗吐、などの作用をもっており、アルコールや薬物依存の治療などに有効だ、という。 アルコール依存に効くのは、マリウァナがストレスを減らし、怒りにくくするかららしい。
 もっとも古い精神薬の一つであるマリウァナが世界中に広まり、禁止される一方では、二億人もの人たちが毎日喫煙しているという歴史と現状とを私たちは見てきた。その薬理学的特性は一九七〇年代末になってやっと明確になった。その毒性は使用量と関係があるようだ。量が過ぎれば、酒でも睡眠薬で もスパイスでも毒になる。マリウァナの有毒性でなしに有益な点を明らかにして、プラスの面を活用するのが賢明な道というべきであろう。」
 ハーバード大学医学部精神医学科のレスター・グリンスプーン氏もその著「マリファナ」『別冊サイエンス心理学特集不安の分析』の中で次の様に述べている。
「カンナビス・サテバは繊維原料として、土人が宗教的儀式に使う薬として、そしてインドでは特に薬剤として用いられ始めてから長い歴史を持つ。一九世紀に西洋では、さまざまな種類の病気や不快感、たとえばセキ、疲れ、リューマチ、ぜんそく、振戦譫妄(しんせんせんもう=ふるえや妄想)、偏頭痛、生理痛などに広くこの薬物が処方された。」
 
 このように医療用に有用な大麻の使用の合法化の動きは、大麻の規制を始めたアメリカ本国から始まった。1996年にカリフォルニア州で医療用大麻の栽培使用が合法化され、2011年までにその動きは17州におよんでいるが、カナダ・オランダ・ベルギー・ドイツ・イギリス・オーストラリアなど世界各国に波及している。
 医療大麻の利用事例としては、2011年10月現在のオレゴン州の場合には人口380万人中医療大麻カードを保持している患者数は55,322人(人口比率1、46%)であり、24オンス(680グラム)まで所持が可能である。オレゴン州の医療大麻カード保持者の適用疾患は、深刻な痛み・持続的な筋肉けいれん・深刻な吐き気・癌・発作(てんかんに限定されない)・緑内障・エイズ・アルツハイマー病の興奮などである。日本国内での医療大麻適用疾患の潜在的需要は、患者合計で3685万人にもなり、仮に医療用大麻が合法化されれば国民の健康増進と国家財政を危機的に圧迫している医療費の削減に貢献するものである。
                 (赤星証人尋問調書添付資料参照)

⑥大麻繊維には免疫力を上げ、電磁波の悪影響を防ぐ効果があるとの見解がある。(弁15号証中山康直著「麻ことのはなし」37〜39頁)

⑦バイオマスエネルギーにおける大麻草の有用性
 バイオマスは、植物が光合成によって、太陽光と二酸化炭素から作り出したものであるが、植物が一年間に地球上で成長した量、すなわち一次生産量は、石油換算で約800億トンに相当し、全世界で消費しているエネルギーの約8倍に相当するといわれている。
 大麻草は、その生育期間が約100日であり、他方木材の場合にはその生育期間が50年から100年(短期サイクルのハイブリッド・ポプラでもその生育期間は5年である)であるので、大麻をバイオマスエネルギーとして使えば、木材よりはるかに有利にバイオマスとして利用できる。また、バイオマスのために植林をすれば、食料生産のための農地が減少することが考えられるが、大麻の場合には、その種が有用な食料源になるので、そのようなことはない。逆に、麻の生産は、バイオマスエネルギーと食料が同時に生産されるという有利さがある。
 また、大麻の種に含まれている有用な成分の利用や茎に含まれているセルロースの有効利用は、人類の健康とゴミ問題の解決ためにも極めて大切である。

⑧麻産業の重要性
 日本における環境問題・食料問題・健康問題・エネルギー問題・雇用問題に対する今後の課題としては、環境循環型で自給自足を目指した農林・経済・エネルギー政策の確立が必要である。
 そのためには、現在の環境破壊型の産業構造を転換する必要がある。具体的には、農業・漁業・林業など自然生態系に即した産業の現代的回復が必要である。その中で紙・建材・生分解性のプラスチック・食料・エネルギー・医薬品などを生産できる麻産業の果たす役割は、極めて大きい。日本では例えば、製紙会社は木材パルプから紙を生産しているが、その既存の技術と設備を生かして麻パルプから紙を生産することが可能である。また、生分解性のプラスチックをつくる技術と設備を既に日本の企業は有していると思われる。このように日本企業の有する技術と設備を生かしながら、麻産業を日本に現代的に復活をすることが可能である。
 また、大麻から生産をすることができる製品は、紙・建材・燃料・衣類・食料・医薬品など2万5000から5万にものぼるといわれている。麻産業の活性化は、農林業・工業の育成と雇用確保にもつながるものである。

第3。大麻取締法の違憲性2
 大麻取締法の保護法益が、過去の判例のように「国民の保健衛生」であるとしても、大麻草には、刑事罰をもって規制しなければならない有害性がない。大麻取締法は、憲法(第13条・第14条・第19条・第21条・第25条・第31条・第36条)に各違反する。
 大麻草には致死量がなく、アルコールやニコチンタバコに比べて心身に対する作用は極めておだやかであり、個人の健康上も格別に害のあるものではない。
 犯罪とは人の生命・身体・財産という具体的な保護法益の侵害であるが、大麻取締法違反事件においてこの様な法益侵害はまったくみられないのである。
 以下に紹介する大麻の作用に関する権威のある研究報告やアンドリューワイル証言によっても、大麻草に刑事罰をもって規制しなければならない程度の作用が無いことが明らかである。(弁47号証「地球維新 vol.2」198~210頁参照)
1。大麻の作用に関する研究報告
① ラ・ガーディア報告 
 一九三八年九月一三日ニューヨーク市における大麻問題について、当時の市長フィヨレロ・ラ・ガー ディアが、ニューヨーク医学アカデミーに対して、ニューヨーク市における大麻問題について科学的、 ならびに社会学的な研究を置くように、要請した。そこで、薬理学・心理学・社会学・生理学などの権 威者たち二〇人が参加して『ラ・ガーディア委員会』が作られ、さらに警官六人が常勤者としてこれを 助けて、系統的な大麻研究がおこなわれた。そして、一九四〇年四月から四一年にかけての研究の結果が一九四四年に発表された。そこでは、次のような結論が出されている。
 1.大麻常用者は、親しみやすくて、社交的な性格であり、攻撃的とか、好戦的には見えないのが普通である。
 2.犯罪と大麻使用との間には、直接の相関関係がない。
 3.性欲を特別に高めるような興奮作用はない。
 4.大麻喫煙を突然中止しても、禁断症状を起こさない。
 5.嗜癖を起こす薬ではない。
 6.数年に渡って大麻を常用しても、精神的・肉体的に機能が落ちることはない。
(弁41号証小林司著『心に働く薬たち』一七二~一七三頁参照)

② インド大麻薬物委員会報告
 1893年から1895年にかけて行なわれたイギリス政府のインド大麻薬物委員会の報告は、全巻、3,698ページからなっており、現在までに行われた大麻の研究の中でも群を抜いて完全で組織的なものである、といわれている。
 アメリカ政府の国立精神衛生研究所の主任研究員で臨床医でもあるトッド・ミクリヤ 医学博士は次のように指摘されている(同氏が編集して発行した「MARIJUANA :MEDICAL PAPERS」という題名で1973年ハにOakland,California,USAのMedi-Comp Pressで発行された書物から弁護人の責任で翻訳したものである)。
 
 すなわち、「その内容の稀少性、そして多分その恐るべき膨大な規模のため、同報告の貴重な情報は、この問題に関する現代の文献の中に取入れられていない。これは実に不幸なことだ。というのも、今日アメリカで議論されている大麻に関する論争の多くは、このインド大麻薬物委員会の報告にすでに 記述されているからだ。イギリス人植民地官僚による文書の、時の流れにも色あせない明晰性に驚嘆するとともに、その努力を評価したい。もし現代において、この報告の中で実現されているような厳密さと全般的な客観性の基準に達する諸研究グループが出来るなら、どんなに幸いなことだろう。」

 そして、この委員会の報告は、結論として次のように述べている。以下は、ミクリヤ医学博士がまとめられた論文の訳である。
『委員会は、大麻に帰せられる影響に関して、全ての証拠を調べた。その根拠と結論を簡潔に要約するのがいいだろう。時々の適量の大麻使用は有益であるということがはっきりと確証された。しかしこの使用は薬用効果として考えられている。委員会が今、注意を限定しようとしているのは、むしろ大麻の通俗的で一般的な使用である。その効果を、身体的・精神的・または倫理的種類の影響に分けて考察すると便利である。

身体的影響
 身体的影響に関して言えば、委員会は、大麻の適量の使用は実際上有害な結果を全く伴わないという 結論に達した。中には特異体質が原因で、適量の使用ですら有害になる例外的なケースもあるかもしれない。恐らく例外的な過敏者の場合、いかなる物の使用も有害でないとはいえないのだ。また特別に厳しい風土や激しい労働と長時間太陽にさらされているような環境においては、人々が有益な効果を大麻の習慣的な適度の使用のためだと考えているケースも数多くあり、この一般の考えが事実に基づいたある根拠を持っていることを示す証拠がある。
 一般的に言って委員会の見解では、大麻の適度の使用はどんな種類の身体的な害の原因ともならない。しかし、過度に使用すれば害を生じさせる。他の陶酔物のケースについてと同様、過度の使用は体質を弱める傾向があり、また使用者をより病気にかかりやすくさせる。かなりの証人達によって、大麻が原因だとされている特定の病気についても、過度の使用に よってもぜんそくを生じさせないことがわかった。ただし、前述したように、体質を弱めることによって間接的に赤痢を生じさせるかもしれない。そしてまた、主に煙を吸込む行為によって気管支炎を生じさせうるということもあるかもしれない。

精神的影響 
 大麻の精神的影響と言われているものに関して、委員会は、大麻の適度の使用は精神に有害な影響を与えないという結論に達した。ただし、特に著しい神経過敏な特異体質のケースでは、適度な使用の場合でも精神的損傷がもたらされることはある。というのは、このようなケースでは、ごくわずかの精神 的刺激や興奮がそのような影響を及ぼすことがあるからだ。しかしこれらの極めて例外的なケースを別にして、大麻の適度な使用は精神的な損傷をもたらさない。これは過度の使用の場合とは異なっている。過度の使用は精神的な不安定の兆しを示し、それを強化する。

倫理的影響
 大麻の倫理的影響に関する委員会の見解によると、その適度の使用はいかなる倫理的損傷ももたらさない。使用者の人格に有害な影響を与えると信じるに足る妥当な根拠は存在しない。他方で過度の消費 は、倫理的な弱さや堕落の兆しを示し、強める。

討議
 この被験者を全体的に観察してみると、通常これらの薬物の使用は度を過ごすことはなく、極端な使用は比較的少ないということを付け加えておくべきだろう。実際上、適度な使用は有害な結果を生み出すことは全くない。最も例外的な場合を除けば、適度な使用を常習的に続けても悪影響が出るということは認められない。
 過度に使用した場合でも、はっきりした悪影響が認められない場合が多くあるが、そうした使用はかなり危険だということをやはり認識すべきだろう。しかし、過度の使用が引き起こす悪影響はほぼ例外なく使用者自身に限られており、社会に対する影響を認識することはほとんどできない。
 大麻の影響を観察することがほとんどできなかったということが、今回の調査の最はっきりした特色である。社会の各層から選ばれた人達の多くが大麻の影響を見たことが全くないと証言していること、そうした影響をきちんと説明できるほど記憶がはっきりしている者の数が非常に少ないこと、影響が認められると いわれたケースを調べてみると、直ちにそうでないことが判る場合が非常に多いこと、これらの事実を総合してみると大麻が社会に及ぼす影響はほとんどなかったということを最もはっきりと示している。」
 更に、大麻の管理政策のあり方について、次のような、貴重な提言をしている。 
『インド大麻薬物委員会は、薬物規制政策における政府の役割に関して、哲学的または倫理的観点からの考察をふまえて、正面から取り組んだ。そして、薬物取締り法は、贅沢取締り法として位置づけられ、その実施の可能性と個人及び社会への影響という観点から考察された。ある著名な歴史家(脚注 :J・A・フロウドの英国史、第二版、第一章五七ページ)は「いかなる法も、一般大衆の実用レベルの上にあっては何ら役にたたず、そうした法律が人間生活の中に入り込めば入り込むほど、違反の機会 が増える」と述べている。こうした表現が封建制度下の英国で真実であるならば、今日の英領インドに おいては更に真実となる。この国の政府は内なる勢力からうまれたものではなく、上から与えられたも のであって、こうした父子主義に基づく政治制度は、世論が形成される過程や国民のニーズが年々はっきりと表されるようになってくると、全く観念的なものになってしまう。父子主義は一六世紀の英国や、インドのある地方における併合直後の初期の開発段階においてはふさわしいものであったといえるだろう。もちろんインドの立法府においても、幼児殺しやヒンズーの寡婦を火あぶりにする習慣に関する法律に見られるように、一般的には受入れられない倫理基準を時として予想することがあっただろう。しかし、こうした法案は、政府の影響力の及ぶ事情において倫理に関する一般の考え方をどうして も変えなければならないという感覚と、時間の経過とともにこうした法案が社会の知識人から同意を得られるという確信から議会を通過してしまった。
 ミルはその「政治経済学」の中の一章で不干渉の原則を論じているが、それによると政府の干渉には二つのタイプがあるという。
 即ち、権力による干渉と勧告または情報の公表による干渉である。前者のタイプの干渉については、次のような所見が述べられた。即わち、「権力による干渉は、もう一方のそれと比べて合法的行為の範囲が非常に限られていることは、一見して明らかだ。如何なる場合においても、権力による干渉はそれを正当化する必要性が権力によらない干渉に比べより強くあるし、また人間生活においてはそうした干渉を絶対的に排除しなければならないところが多くある。社会の団結に関していかなる理論を取ろうと、またどんな政治制度のもとで生活しようとも、いかなる政府も、それが超人間的存在のものであれ、選ばれた者のものであれ、一般人のものであれ、絶対に踏込んではならない部分が人間一人一人のまわりに存在する。思慮分別ができる年齢に達した人間の生活には、いかなる個人または集団からも支配されない部分がある。人間の自由や尊厳に全然敬意を払わない者が投げかける疑問などを相手にしない部分が人間の存在の中にはあり、またなければならない。要は、どこにそうした制限を置くかということだ。自由に確保されるべき領域は、人間生活のどれほど広い分野を占めるべきなのか。その領域は、個人の内面であれ外面であれ、その人の人生にかかわる全ての分野を含み、個人への影響は、規範や倫理的影響を通してのみにするべきだ、と私は理解している。特に内的意識の領域、つまり思考・感情・ものの善悪・望ましいものと軽蔑するものとに対する価値観に関しては、それを法的強制力か単に事実上の手段によるかは別にして、他者に押し付けない、という原則が大切だと私は思う。そして例外的に他者の内的意識や行動を規制する場合には、立証責任は常に規制を主張する側にある。また個人の自由に法律が介入することを正当化する事実は、単なる推定上のものであってはならない。
 自分がやりたいと考えていることが押えられたり、何が望ましいのかという自分の判断と逆の行動をとることを強いられたりすることは、面倒なことだけではなく、人間の肉体または精神の機能の発達を、感覚的あるいは実際的な部分にかかわらず、常に停止させる傾向がある。各個人の良心が法的規制から自由にならなければ、それは多かれすくなかれ奴隷制度への堕落に荷担することになる。絶対に必要なもの以外の規制は、それを正当化することはほとんどない」この言及を長々と引用した理由は、この見解が、政府が大麻薬物を強権をもって禁止すべきか否かを決定するための指導原則をはっきりと説明していると、本委員会が信ずるからである。』
 
 私も、大麻規制のあり方としては、このインド大麻薬物委員会つまり、ミルの見解は、日本国憲法の基本精神と同じであり、それを具体的に表現したのが、第13条の幸福追及権であると考える。なお、インド大麻薬物委員会は、薬物(具体的には、大麻のことであるが)の使用を贅沢と位置付けているが、この贅沢という意味は、精神的幸福感という意味である。
 したがって、大麻規制のあり方としては、ミルのいう政府の干渉の二つのタイプのうち、強制的な権力による干渉ではなく、勧告または、情報の公開という方法が、日本国憲法の趣旨に合致するのであり、現行の懲役刑という大麻の規制方法は、国民の幸福追求権を否定し、更には、自由な精神のありかたすなわち、思想・良心の自由を否定するものである。
③ WHOのレポート(No.478、1971年)
 このレポートは、1970年12月8日から14日まで11人の世界的な専門家が討議のうえ作成したものである。そこでは、大麻の作用について、次のように報告されている。
 1.大麻を使っていると、それが飛び石になって、ヘロインその他の薬の中毒に  移っていくという説(踏み石理論)は、確かでない。なお、この踏み石理論は、 アメリカで、禁酒法時代に、アルコールを 取り締まる根拠として、詰まり、ア ルコールが、ヘロインなどの薬物中毒の原因になるとして、主張された理論である。
 2.奇形の発生はない。
 3.凶暴な衝動的行動は、稀である。
 4.犯罪と大麻の因果関係は、立証されていない。
 5.耐性の上昇、すなわち、同じ効果を得るのに必要な使用量の上昇は、ほとんど見られない。
 6.身体的依存すなわち、その使用を止めると、汗が出るなどの禁断症状はない。
 7.多くの常用者には、精神的依存が見られる。しかし、この精神的依存いうことは、例えば、珈琲や煙 草、お酒、さらには、お菓子が好きな人が、また、飮みたいなとか、食べたいなと感じる気持ちのことであって、大麻だけの特徴ではないし、格別、刑事罰を持って規制しなければならない作用ではない。かりに、この精神的依存性が、刑罰を科する根拠にされることがあれば、例えは、ご飯が好きな人は、ご飯に精神的に依存しているということになり、ご飯禁止法を作らなければならないことになってしまうのであり、この考えが、極めて不合理なことは、明らかである。
(弁41号証『心に働く薬たち』小林司著、筑摩書房発行、180~181頁参照)
④ 大麻と薬物の乱用に関する全米委員会報告
 ニクソン大統領は、1971年に前年に議会を通過した薬物規制法に基づき前ペンシルベニア州知事のロイヤルドシェイファを委員長とする大麻と薬物の乱用に関する委員会を設置した。この委員会は、保守派といわれる13人の委員によって、構成されており、1年に及ぶ調査の後、1972年3月 に『マリファナ:誤解の兆し』と題するレポートを発表し、更に1973年には、最初のレポートと結論を同じくする最終報告を提出した。
 この報告の結論であるが、生田典久氏が、ジュリストのNo.654の42~43頁で、次のように簡潔にまとめられている。
 
 1.大麻には、耽溺性がない。
 2.大麻使用と犯罪またはその他の反社会的行動との関連性はない。
 3.大麻使用は、ヘロインなど危険な薬物への足掛かりにもならない。
 4.長期間の大麻常用者には、ある程度の耐性が生じることがあり得るが、その程度は、煙草以上のものではない。
 5.大麻の使用者も大麻自体も公衆の安全に対して、危険な存在を成しているとはいいえない。

2。アンドリュウワイル証言の紹介
 大麻に刑事罰を課するほどの有害性がないことは、以下のアンドリュー・ワイル証言からもあきらかである(弁35号証長吉秀夫著「大麻入門」88~105頁)を以下引用する。弁59号証「アンドリュー・ワイル証言」も参照されたい。
「1979年京都 アンドリュー・ワイル博士の証言
 厳しい取り締りがおこなわれていた1970年代の日本でも、マリファナの存在が認知されると同時に、大麻取締法による検挙者数は増加していった。
 その数は、1966年には176人だったのに対し、70年には487人、75年には733人、79年には1070名となっている。乾燥大麻や大麻樹脂の押収量も増加している。しかし、アヘンやヘロインなどの麻薬は減少に転じていった。ただし、ヘロインの使用者が減少していたとはいえ、覚せい剤の検挙者は毎年5000人前後であり、年々増加傾向にあった。また、ヒッピーブームの影響により、幻覚剤であるLSDの使用も1972年、73年の2年間に爆発的に増加する。そんな中で、大麻についての情報はマスコミを通して知られていく。それと同時に、大麻の取締りに疑問を呈する人々も現れたのだった。
 1977年、京都の芸術家の芥川耿氏が自宅で栽培した大麻を吸引し逮捕された。その裁判において芥川氏は「大麻取締法は憲法違反である」と訴え、法廷闘争へと発展した。毎日新聞などのマスコミや市民運動家など様々な人々を巻き込んだこの裁判は、日本における大麻解禁運動の始まりといってもいいだろう。
 一連の裁判の中で、「大麻とは何か」ということを様々な人物が証言している。『ナチュラルマインド』などの多くの著作を持つ医学博士のアンドリュー・ワイル氏も来日し、日本の法廷で証言している。
 ハーバード大学民族薬理学の研究員をしていたワイル博士は、1968年にボストン大学医学部でおこなった大麻吸引の臨床実験データをもとに、政府機関などに助言をおこなっていた。その当時に発表されたWHO(世界保健機関)のレポートの内容や、ニクソン大統領の諮問委員会、そしてカリフォルニア州やアイオワやマサチューセッツの州議会に招かれて大麻の医学的な効能についての証言をおこなっている。大麻に対しての博士の見解は中立であり、大麻問題を知る手がかりにもなる。少し抜粋してみよう。

証人尋問調書 
昭和54年6月5日第9回公判速記録より
事件番号昭和52年(わ)第1003号 
京都地方裁判所 大麻取締法違反事件
裁判長 川口公隆
弁護人 田村公一
弁護人 丸井英弘
証人 アンドリュー・ワイル
通訳人 片桐 譲

(略)
弁護人(田村) 1972年にニクソンの諮問委員会である「マリワナ及び薬物の乱用に関する全国委員会」が研究報告をしておりますが、証人はこの全国委員会から何か意見を求められたことがありますか。
証人 発行されたのが1972年で1970年にその委員会から意見を求められております。
弁護人(田村) 場所はどこですか。
証人 首府のワシントンです。

(略)
弁護人(田村) WHOの報告と、ニクソンの諮問委員会の全国委員会の報告とは、どちらが信用がおけるのでしょうか。
証人 私はニクソン・レポートのほうがいいと思います。何故ならば、それにはマリワナを使った人の実際の経験、証言が集められているからです。
弁護人(田村) WHO報告の問題になっている個所について、正しいかどうかをお聞きしますが、WHOの報告では「大麻を大量に摂取した場合、通例、急性中毒症状がみられる」と報告されているのですが、これは証人から見て、どうでしょうか。
証人 それは可能ではありますが、私自身はほとんどその例を見ておりません。 そしてほかの種類の薬物、例えばアルコールとかアスピリン等に比べて、はるかにそういうことは起こらないと思います。 例えばアメリカ合衆国では、何百人という人が、毎年アスピリンの飲みすぎで死んでおりますが、マリワナの飲みすぎで死んだ人はいません。
弁護人(田村) すると証人自身は、大麻を吸って急性中毒症状がみられたということを見たことはないわけですね。
証人 私自身が見たのは、ハシッシュを食べて、その結果として非常に眠くなって、長いこと寝続けたという人はおりました。これが私の見た最悪の例です。 しかし、タバコの形で吸った場合には、中毒症状を見たことはありません。
弁護人(田村) 証人自身の観察にもとづかなくても、何か信用性のある研究で急性中毒症状がみられたという例はありますか。
証人 マリワナの資料についての問題点というのは、セカンドハンド、人から聞いたということの資料ばかりだということが問題で、特に古い文献資料、1920年代や1930年代のがそうなんです。そのころの資料にはマリワナの飲み過ぎというようなことが言われております。しかし、現在の新しいのには、そういうマリワナのとり過ぎによって起こる急性中毒症状がないということです。それで、これらの古い資料が、何故そういうふうに中毒症状があるということを言い出したかと言うと、多分、医者達は、ほかの薬物と一緒にとった場合のことを見て、そういうふうに思ったんだと思います。
弁護人(田村) すると、WHOの報告は相当古い資料を使っているので、信用性がないということでしょうか。
証人 そうです。

(略)
弁護人(田村) 全国委員会の報告書では、マリワナを中程度吸うと「精神依存が立証される」というふうに報告しておりますが、これについてはどのように思われますか。
証人 「精神依存」と言う言葉がちょっと不明瞭であいまいだとおもいます。 なぜならば、それは我々が気に入らないことを何回も繰り返してする行動に対して名付けるときに使う言葉だと思います。 そしてその繰り返す行為が我々がいやだと思わないことだったら、我々はそれを、「精神依存」とは呼ばないのです。 例えばアメリカや日本にはテレビを見ずには一日も過ごせない人々がたくさんいますが、普通これを「精神依存」と呼ばないのであります。 しかし、ヘロインとかモルヒネのような薬物においては、身体的な依存性が見られます。アルコールでも身体的依存が見られます。 しかし、マリワナの場合は、それを長年間常用しても身体的変化というのは見られません。 ですから、これはテレビを見なければすごせない、という人とどこが違うのでしょう。

(略)
弁護人(丸井) 大麻が有害であるという説の中に「スッテッピング・ストーン理論(踏み石理論)」というものがありますが、これの内容と、これが正しいのかどうかということについて証言してください。
証人 これはマリワナについての古い神話で、何回も繰り返されてきた説だと思います。
 この説はマリワナを使っていると、それよりももっと危険な薬物へ行く踏み石になるのではないか、特にヘロインに行かせるのではないかという考えです。 確かにアメリカ合衆国で、ヘロイン常用者に聞きますと、その前にはマリワナを吸っていたという人はいます。 しかし、彼らはそれ以外にも若いときにいろいろなことをやっています。 多くのヘロイン常用者達は、12歳になる前からタバコを吸っていたりします。 そして、みんなヘロインを始める前に、アルコールを飲んでいます。 それに反して、マリワナ常用者の大部分はヘロインに対して何の興味も示しません。 ですから、私はこれは嘘の理論の例だと思います。
弁護人(丸井) 次に「催奇形性」があるというような意見もあるようですが、これについてはどうでしょうか。
証人 私はそれを証明する証拠はないと思います。しかし、それに反して、タバコを吸う女性の場合には、吸わない女性よりも、統計的に奇形児の発生が見られます。 そして、今度、アルコールを飲む女性の場合もより多くの異常児が発生するということがわかってきました。
弁護人(丸井) 大麻を吸うと、人を攻撃的にさせ、暴力犯罪を引き起こすという意見もありますが、この点についてはどうでしょうか。
証人 そのことについて、確かにそう言えるというのはアルコールであります。それに反して、マリワナは人々を静かにし攻撃的でなくします。
(略)
証人 イギリスやアメリカでも、少し、マリワナ使用によってある種の脳の障害が起こったという報告はあります。しかし、これらの報告はマリワナ以外の要素がそこに入っていたんじゃないかという可能性を配慮する努力をしていません。 例えば、過去に何か傷を受けたことがあるかというようなことに対して配慮していないのです。
 そして、例えばジャマイカのように非常に多くの人がマリワナを吸っているというところでの統計として、脳障害が起こっているということをいっている者はありません。
弁護人(丸井) 大麻を日常的に使っている社会というかグループで、そういう脳障害が起こるとか暴力犯罪が起こるというようなことが見られますか。
証人 いいえ。

 ワイル博士は、医療大麻についても言及する。1970年代の発言であるにも関わらず、この時点ですでに現在実際におこなわれている大麻医療の内容についても博士は明言している。

(略)
弁護人(丸井) 大麻を吸って、何か利益になる、いいことというのはあるのでしょうか。 健康の面、精神的な面において・・・。
証人 はい。まず健康についてですが、マリワナは医学のほうでは非常に長いこと使われてきました。 しかし、今世紀になってから使われなくなったのです。しかし、今また新しくマリワナについての関心が医学会で高まっています。 というのは、それが安全だからです。普通の医療品と比較して安全なのです。 いくつかの点で、現在の医療をしているものを満たすからです。ですから、4つの州では、特定の医療のためには、マリワナを使うことを許しました。 その一つは癌の患者が癌の薬で吐き気を催すのを治すために使うことです。
 マリワナはこの目的で非常に効果を発揮します。しかも、それは毒性がありません。
第二には目の病気の緑内障、あるいはそこひに対してですが、この病気は目の中の眼圧が高まって、最後には視力を失うものですが、マリワナはその圧力を減らします。
  第三にマリワナは喘息の治療に使われます。第四に、脳性麻痺、特に筋肉の脳性麻痺に対して使われます。脊髄に対する障害、あるいは生まれつきの脳性麻痺に対して使われています。 そして、ここ数年のうちに他の病気の症状に対しても、マリワナが治療に有効であるということが発見されるでしょう。
 精神的なよい面について述べますと、それはずっとむずかしい問題です。 それは一人一人によって非常に違うからむずかしいのです。 マリワナは、ある宗教においては長いこと使われたという伝統があります。 特にアジアでは使われてきました。そして多くの人々がマリワナは精神的によい影響を与えたという人がいます。 私が会った多くの人々の中で、マリワナを使ったために瞑想するようになったという人がたくさんいます。しかし、マリワナが精神的なよいことをもたらすというのも間違いだと思います。  それは、マリワナが脳障害を起こしたり、ヘロイン使用に走らせると言うのと同じく間違っています。 マリワナは人々を精神的に助けるという可能性、潜在的力はあると思います。 しかし、これはそれを使う人が適切に積極的に使うかどうか、ということにかかっています。確かに、マリワナをばかな目的で、しかも使い過ぎるということはありうることです。そしてそういうふうにするひとがたくさんいることも事実です。

 アンドリュー・ワイル博士は医学博士として大麻やその他の民族に伝わる薬物についても研究を重ねている。アメリカには、政府以外の大学の研究室や市民団体レベルでも様々な検証をおこない、常に連邦政府と意見交換をおこなっている。相変わらず連邦政府は大麻については厳しい姿勢を崩してはいないが、これらの運動を許容しする政府の姿勢は、市民たちの運動と共に評価に値する。
 さて、ワイル博士への質問は、大麻取締法の有効性についても言及する。

(略)
弁護人(丸井) 日本では大麻取締法があって、大麻を持っていたり、人にやったりすれば、5年以下の懲役刑というふうになっていますが、この刑事罰でマリワナを禁止すると、何か逆に悪い効果が出るというようなことが言えるのでしょうか。 アメリカなどの経験から見て、どうでしょうか。
証人 第一に、そういう法律は実際には効力がないと思います。
弁護人(丸井) それはどういう意味ですか。

証人 マリワナ関係の法律がアメリカでできてからマリワナ使用率は高まっています。 その一つの理由は、法律があるということで、かえって反抗の形としてマリワナ使用というのが出てきたと言えます。 二番目に、法があることでかえって個人や社会に悪影響があると思います。例えば、マリワナによって起こることで一番悪いことは、刑務所へ入らなければならないということです。しかも、昔から言われていたほどマリワナが危険じゃないということが最近、わかりつつありますので、人々はそのことをきっかけにして、法律とか社会の全体の構造をもう一回見直しつつあるわけです。 ですから、現実を反映しないような法律は、結局は法律体系全般にとって、非常に破壊的な影響を持ってしまうことになります。 そして、アメリカでこれらのマリワナを罰する法律の一番の悪影響は、これらのマリワナ裁判でもって、裁判所を非常に混雑させて、裁判所が動けなくなってしまった、ということであります。 そして、その代わりに、本当に重要な犯罪に目が向かなくなってしまっているということです。
検察官 マリワナを使うことによって「妄想」とか「不安」あるいは「記憶力の減退」「連想の混乱」等が起こりうるということですが、そういう意味で、マリワナはやはり有害であるということになるんじゃないですか。
証人 そういうことはありえます。しかし、現実世界で起こっている他のことのほうが、そういうことをもっとしばしば引き起こすし、もっとそういう実例があると思います。アルコールはごく当たり前に人を殺したり、精神異常にしたり、病気にしたりすることがあります。 どんな薬でも、間違って使ったり、使用しすぎたりすれば、それは危険です。 しかし、現実使われているほかの薬物に比べれば、マリワナはずっと安全だと私は信じます。
検察官 アメリカの法的規則について先程証言されたのですが、アラスカでは自らが使うためならば合法だということですが、アラスカでマリワナが合法でないとされる場合はどういう場合があるのでしょうか。
証人 個人の使用のために使ったり栽培したりすることはいいですが、しかし、法律では量について明記してあります。アラスカでは冬が非常に長いので、人々は非常にたくさんのマリワナを作ることができて、しかもそれは自分の使用のためだと言っております。しかし、売ることは非合法であります。
検察官 アラスカでは、人に販売することはいけない、ということになっているということですね。
証人 はい。
検察官 アラスカ以外の州では、マリワナの使用あるいは所持というものは罰則によって禁止されているということになるわけですね。
証人 州によって罰則が違います。
検察官 罰則が違うというのは、罰則の程度というか、軽い処罰をするというところと、それより若干重い処罰をするところがあるという意味ですか。
証人 例えばカリフォルニアでは、30グラム以下の場合だったら罰金で、しかも罰金がおこなわれない場合もあります。 しかし、ネバダではいかなる量のマリワナでも、所持していたら終身懲役刑というところもあります。
弁護人(丸井) 終身懲役刑になるということですが、アメリカで非常に長期の懲役刑を科するのは個人の幸福追求権とか、プライバシーの権利を侵害するから、憲法違反だという裁判例はあるのでしょうか。
証人 アラスカでは、そういうことでアラスカの最高裁判所でもその判例は支持されております。
弁護人(丸井) それは憲法違反ということですか。
証人 はい。アラスカの最高裁判所では、これらのマリワナ取締法は憲法違反だということを言いました。 その理由は、州政府はマリワナが非常に危険であるということを証明できなかったからです。ですから、これはプライバシーを侵すということで憲法違反であるというふうに考えたわけです。
弁護人(丸井) 具体的に憲法のどういう条項に違反したということですか。
証人 まず、憲法の前文で個人の生命と自由と幸福の追求を書いたところです。それでマリワナを吸っている人は、自分は幸福を追求しているんだ、というふうに言っております。
弁護人(丸井) すると憲法で規定されている幸福追求権からして憲法違反だということになったわけですか。
証人 はい。幸福追求権に反しているということと、もう一つ人権宣言では家宅捜索について、それを禁止しているわけです。政府の側がはっきりした理由を示さずに個人の家を捜索することは憲法の一番最後の人権宣言のところで禁止されているわけです。
弁護人(丸井) 正当な理由がなく家に入って捜索などをした場合は、憲法違反だということになるわけですか。
証人 はい。政府は例えばマリワナは社会にとって危険であるという正当な理由があって家宅捜索をするんだといっていたわけです。ですからこの議論は本当にマリワナが危険であるかどうか、ということの議論でその真偽が出なければならないわけです。そして、アラスカではとにかく政府側はそれが非常に危険であるということを裁判所に対して証明できなかったわけです。 
(略)     」
 大麻をヘロインなどと同様の危険な麻薬と誤解している人がこの証言を聞いたら、信じられないほど愚かな証言に感じるだろう。しかし、アメリカでは60年代から現在まで、様々な機関が大麻を研究し続けている。その上で州議会や市民は自己判断をおこなっているのが現実の姿である。しかし、残念ながら日本では過去一度も、大麻の危険性や有効性についての検証はおこなわれていない。
 1970年代のアンドリュー・ワイル博士の証言や芥川氏の大麻取締りに対する様々な疑問は、日本の大麻問題を考えるその後の人々に影響を与えていった。       」

3。大麻草(具体的にはTHC)の無害性
  (1) 全米科学アカデミー 医学研究所(IOM)報告Q&A 大麻の医療効果についての科学的検証(Questions about medical marijuana answered by the Institute of Medicine’s report)の紹介(弁45号証)
この冊子は、全米科学アカデミー医学研究所(IOM)が1999年に発行した報告書を、マリファア・ポリシー・プロジェクトがQ&Aとして要約したものである。日本語訳は、前文の解説とともに、カナビス・スタディハウスのウェブサイトに掲載されている。
 転載元:カナビス・スタディハウス http://cannabi s-studyhouse.com
    翻訳原文 MarIjuanaPolIcy Project http://www.mpp.org/
    IOM報告原文 http://wwwnap.edu/openbook.php?record_Id=6376
日本語訳の解説で次のように述べている。
 「1999年にカリフォルニアの住民投票で医療大麻条例が成立したのを受けて、翌年、ホワイトハウスと麻薬撲滅対策室(ONDCP)は100万ドルを拠出して、過去の研究を総合的に再検証して本当に大麻に医療効果があるのかどうか調査するように全米科学アカデミー医学研究所(IOM)に依頼した。2年を費して1999年に発表されたこの調査報告書では、大麻が比較的無害であり、痛みの緩和や嘔吐の抑制や食欲増進などの医療効果があることを認めている。
 ここで取り上げる想定質問は、マリファナ・ポリシー・プロジェクトのエキスパートがわかりやすい要約として作成したもので、報告書にこのようなQ&Aがそのまま記述されているわけではない。 しかし、答えはすべて報告書からの引用で出処ページが添えられ、さらに詳しくは本文を参照できるようになっている。報告書の主眼は医療大麻の効果の検証だが、当然のことながら、医療使用の前提になる大麻の安全性や喫煙のリスクについても多くのページが割かれている。
 しかし、アメリカ政府は自ら依頼しておきながら、アメリカで最も信頼されている機関が行った この研究結果すら受け入れることを未だ拒み続け、繰り返し大麻には医療効果が立証されていないと主張している。だが、もはや有力な左右マスコミも、科学を政治的にねじ曲げ、苦しむ患者たちをさらに苦しめる政府の欺瞞をこぞって非難するようにまでなっている。
 現在では、この報告書の契機となったカリフォルニアの住民投票条例215成立から既に10年が 経過しているが、その間に多くの州がそれに追随して同様の医療大麻条例を制定している。また、医療大麻研究にはエンドカナビノイド・システムの逆経路発見をはじめ、特定の疾患用大麻の品種改良、喫煙のリスクを回避することのできるベポライザーの開発などおびただしい進歩がみられる。
 また、報告書当時、大麻のタールには多くの発ガン性物質が含まれていることが明らかになり、肺ガンの危険性が叫ばれていたが、報告書では、喫煙による肺ガンなどのリスクをたびたび懸念しながらも、関連性を示す決定的な証拠はないと指摘している。実際、最近の大規模研究で、大麻の喫煙には肺ガンのリスクがないことが確認されたが、この結果は、大麻の悪害の根拠として喫煙と肺ガンの関係を喧伝してきたアメリカ政府に大きな打撃を与え、IOM報告書への信頼をいっそう確かなものにすることになった。
 現在からみれば、この報告書の医学情報に関しては記述の仕方も慎重でいささか控えめにすら感じられるが、信頼できる機関による最も大規模な調査報告としてその社会的重要性は少しも失われていない。                                       カナビス・スタディハウス」
 以下、大麻つまりTHCの作用について説明している項目を引用する。
「12) 大麻を医療品として使うと中毒になるのでは?
「医薬品として認証されている規制薬物でも長期に使用すれば依存性が生じるが、このことはごく通常の患者管理の一部であって、一般には過度のリスクとはみなされていない。」(page98)
「確かに、動物実験ではカナビノイドの依存性が発生することや、禁断症状も観察されているが、他の薬物の依存性や禁断症状に比較すれはいずれも穏やかなものであることが明らかになっている。」(page35)
「大麻やTHCに禁断症状が現れることには疑問の余地はないが、アルコールやヘロインの身体的禁断症状に比べれば穏やかで僅かなものに過ぎない。」 (page89,90)
タバコ             32%
アルコール           15%
大麻(ハシシを含む)        9%
抗不安剤(鎮痛剤や睡眠剤を含む)  9%
コカイン            17%
ヘロイン            23%
    表3-44 使用人口に対する依存症になった人の割合(page95)
「他の大半の薬物に比べれば...大麻ユーザーの依存性は比較的稀にしか起こらない。」(page94)
「依存性を起こす大麻ユーザーはごく少数で...依存性が現れたとしても、大麻を単独で使って いる場合は、コカインの乱用や大麻とアルコールなどの併用した場合ほど深刻なものにはならない。」 (page96,97)
「要約すれば、大麻ユーザーが依存性に陥ることは余りないが、一部の人たちはそうなることもある。しかし、それでもアルコールやニコチンなどのユーザーほど多くはなく、大麻の依存性は 他の薬物の依存性ほど深刻なものになることはない。」(page98)
13)大麻を使うともっと危険なドラッグをやりたくなるのでは?
「大麻の使用が他の薬物の乱用を引き起こすという因果を示す確定的な証拠はない。また、仮に薬物の連鎖を示すデータがあったとしても、医療使用の場合にそれをそのままあてはめることはできないという点に注意しなければならない。大麻の処方が可能になって医療利用ができる ようになっても、違法使用の場合と同じパターンが繰り返されるわけではない。」 (page6)
「大麻の生理学的な特性が踏み石として働くという証拠はない。」 (page99)
「むしろ、大麻の置かれている法律的状況がゲートウエイ・ドラッグにしてしまっている側面がある。」(page99)
「注意さえ怠らなければ、特に大麻がゲートウエイ・ドラッグとしてさらに危険な薬物の先駆けになったりすることはない。」(page101)
14)大麻は免疫システムを害するので、医療大麻も違法にしておくべきでは?
「現在までのところ、大麻に短期的に免疫機能を損なうかどうかはよくわかっていないが、たとえあったにしても、合法的な医療使用を否定しなければならないほどの深刻なものではないと思われる。大麻使用による急性副作用のリスクは他の多くの医薬品の許容範囲内におさまっている。」(page126)
「大麻の使用が免疫系のT細胞やB細胞の機能を断続的に混乱させるとする研究もあるが、その程度は僅かのもので、他の多くの研究では正常値を示している。」(page112)
「大麻が人間の免疫機能を損なうという主張は多いが、実際には大麻の免疫系に対する影響はまだよくわかっていない。」(page 109)
15)大麻は脳に障害を与えるのですか?
「初期の研究にはヘビーな大麻ユーザーの脳に構造的変化が見つかったと主張するものもあるが、それ以降、もっと進んだ技術を使った研究で再現されたことはない。」(page106)
16)大麻は無動機症候群を起こすのでは?
「ヘビーな大麻使用が原因でそうした症状が見られたとするケースでも、大麻の使用と無動機症候群の間の因果関係を示す説得力のあるデータはない。」(page107,108)
17)大麻は寿命を縮めるような健康問題を引き起こすのでは? 「大麻を使っている人たちの寿命が短くなることを示した疫学調査のデータはない。」(page109)
18)大麻は肺に危険過ぎるのでは?
「大麻をタバコと同じ重さのジョイントにすると、大麻スモーカーの肺にはタバコの場合よりの4 倍のタールが残ることが知られている。」(page111)
「しかしながら、普通のレクレーショナルの大麻・ジョイントではタバコより巻きかたがゆるく、 1本あたりではおよそ半分の重量しかない。さらに、一般に、タバコ・スモーカーのほうが1日あたりに吸う本数がかなり多い。(page111,112) 「現在までのところ、タバコのように、大麻がガンを引き起こすという確固たる証拠は見つかっていない。...大麻を常習的に喫煙した場合に呼吸器系のガンを引き起こすかどうかについては、綿密に計画された今後の疫学研究の結果を待たなければならない。」(page119)
19)大麻は生殖に問題を起こすのでは?
「卵子に対する精子の受精能力のカナビノイドの影響に関する研究には相反する結果が示されている。また、長期の大麻ユーザーでは精子の濃度が低くなる傾向も観察されている。」(page122)
「エビデンスのきちっと整った文献のなかで、短期間の大麻やカナビノイドの医療使用が生殖機能を妨げるといった深刻な懸念を指摘しているものは見られない。」(page123)
20)大麻は人間を反抗的・反社会的にしてしまうのでは?
「親の中には自分の子供が大麻を使ってから反抗的になったという人もいるが、クラウリーらの研究者が行った調査では、不良青少年は大麻乱用以前にすでに問題を起こしていた。」(page97)
21)大麻の多幸感は医療効果を弱めてしまうのでは?
「大麻のハイが治療効果を下げるとする研究は見られない。逆に、気分の改善、不安の緩和、軽い沈静作用などが医薬品として好ましい特性ともなりうる。大麻の精神作用は一部の症状の治療にわずかな副作用となることもあるが、その他の症状に対しては病状の緩和に直接役に立っている。」(page84)
22)妊婦が大麻を使うとどのような悪影響がありますか?
「いくつかの研究によれば、妊娠時に大麻を常用していた女性から生まれた乳児の体重が少ない傾向が示されている。以前からタバコを常用している妊婦についても同じ傾向が認められているが、それらの研究では、タバコと大麻の程度の違いについては報告されていない。」
「また、妊娠中に大麻を吸っていた母親から生まれた乳児の平均体重は、大麻を吸っていない対照群の母親から生まれた乳児より95グラムほど少ないとされているが、妊娠期間や先天的な異常児が 生まれる率には統計的に明確な差は見出されていない。」 「しかしながら、ジャマイカで行われた調査によると、妊婦の大麻摂取は喫煙ではなく、もっぱらお茶にして飲んでいるという違いはあるものの、妊娠期に大麻を摂取していた母親とそうでない母親から生まれた乳児では、生後3日目でも1ヶ月目でも何ら違いは見つかっていない。」 (page123,124)
23)大麻には他にどのような治療効果が見込まれますか?
「大麻の主要成分であるTHCとCBD(カナビジオール)は双方とも抗酸化活性をもっているために神経を保護する働きがある。つまり、細胞がストレス下に置かれた時に放出される酸素の毒性形態であるフリーラジカルを減らす作用がある。」(page47)
「カナビノイドの新しい応用として最も注目されているものの一つが神経保護機能で、外傷性障害(トラウマ)や虚血、神経性疾患などに伴う神経細胞の死の危険を回避することが知られている。」(page211)
「大麻には多発性硬化症や脊髄損傷に関連した痙縮を緩和する働きのあることは多くの事例報 告で知られている。動物実験でも、カナビノイドが、痙縮に影響のある脳の運動野に作用することが示されている。」(page160)
「多くの脊髄損傷患者が、大麻でけいれんが軽減したと証言している。1982年に実施された脊髄損傷患者に対する調査では、回答43人22人が大麻でけいれんが軽減したと報告している。」(page163,164)
「多発性硬化症の実験用に自己免疫性脳脊髄炎を起こさせたラットの研究で、カナビノイドには中枢神経系のダメージの兆候や症状を弱める働きのあることが示されている。」(page67)
「明らかに、現在の偏頭痛の薬には改良が必要とされている。偏頭痛の薬としてはスマトリプタン(イミトレックス)が最良のものであるが、患者の30%には効果をもたらさない。...一方、偏頭痛の発生に関与しているとみられる脳の中脳水道周囲灰白質(PAG)付近には痛みを抑える 神経システムの他にもカナビノイド・レセプターが豊富に存在するので、カナビノイドを使えば 偏頭痛を抑えることが可能だと考えられている。」(page143,144)
24)大麻は緑内障に有効だといわれていますが、本当に効くのですか?
「緑内障が発生するメカニズムはまだよくわかっていない。...緑内障は、加齢、人種、眼圧がリ スクファクターといわれている。高齢者に最も多く見られる原発開放隅角緑内障(POAG)はゆっくりと進行する疾患で、60才以上で1%、80才以上で9%以上の人に見られる。80才以上のアフ リカ系アメリカ人に限れば10%を越えている。さらにアフリカ系カリビアン(アフリカ系アメリカ人との混血)の高齢者では20~25%に達している。」 (page173)
「リスクファクターとしてコントロール可能なのは眼圧だけなので、治療の中心課題は眼圧を下げることに向けられる。しかし、眼圧を低下させることができたとしても、必ずしも緑内障の進行を止めたり遅くできるとは限らない(page174)
「医療大麻の効果例として緑内障がよく引き合いに出されるが、データは必ずしもそれを支持しているわけではない。確かに大麻には眼圧を下げる働きがある。しかし、効果の持続は短く多量の摂取が必要となるために、緑内障の治療に一生使い続けていると多くの副作用に見舞われると 指摘さている。...大麻喫煙の効果を調べた臨床研究からは、大麻の喫煙による緑内障の改善効果は期待できそうにない。」 (page177)
「しかしながら将来的には 、カンナビノイドを分離して、眼圧低下効果の持続性が長く、THCよりも精神作用の少ない治療薬が開発される可能性がある。」(page177)
25)アメリカ人は本当に医療大麻の合法化を支持しているのでしょう か?
「患者が医療目的で大麻を使うことに対する社会の支持には強いものがある。1997年と98年に実施された世論調査では、回答者の60~70%が大麻の医療利用に好意的な見方をしている。」(p18)」

(2) 厚生労働省の外郭団体である麻薬・覚せい剤乱用防止センターが作成した「ダメ。ゼッタイ。」ホームページでは、大麻の有害性を強調しているが、その内容は科学的・医学的根拠が全く不明な情報に基づくもので信用性がないものである。これについては、大麻取締法被害者センターが紹介している「財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センター ホームページ
「薬物データベース : 薬物別解説/大麻について」に対する医学的検証」と題する論文(弁42号証)で明らかである。また、弁61号証の記事及び弁62号証の行政文書不開示決定書からも厚生労働省の大麻に対する見解が科学的に正しい知識に基づくものであることを示す根拠文書を厚労働省が有していないことが明らかである。
 
4。欧米における大麻政策(弁47号証「地球維新2」210〜213頁) 
① 朝日新聞2001年3月27日国際版では、『 大麻 欧州「容認」へ傾斜 』と題して、次のように欧州の主な国の大麻政策を紹介している。
 日本国憲法は基本的人権の保障を基本理念とするものであり、大麻政策においてもオランダを初めとする欧州諸国の政策こそがこの憲法の理念に合致するものである。

オランダ
 1976年に薬物法を改正し、社会が看過できない危険があるヘロインやコカインなどの麻薬と大麻を区別。18歳以上の30g未満の大麻所持は訴追されない。
 コーヒーショップでの大麻販売は①1回の販売量が5g以下②18歳未満への販売禁止③公共の秩序を乱さないなどの条件を満たせば認められる。

デンマーク
 少量の大麻所持については警告のみで対応するよう、検察長官が警察に勧告

ドイツ
 すべての麻薬の少量所持は▽第三者に迷惑をかけない▽未成年者が関与しない▽個人使用目的である、などの条件をみたせば訴追を免れる。一部の州では販売を容認
スペイン
 公共の場などでの個人使用は罰金の対象だが、実際はほとんど取締は行われていない。

フランス
 1999年、個人使用は訴追しない方針を政府が発表

イタリア
 1回目は勧告、2回目以降は運転免許証没収など行政罰だが、実際はほとんど適用されていない。

ポルトガル
 2001年1月、法改正案が議会を通過。すべての麻薬の個人使用を罰則の対象としない代わりに、麻薬使用者は依存症の程度に応じて治療を受ける義務を負う。
英国
 少量使用は警告か罰金刑。政府は最近、大麻使用者が雇用主に警告を犯歴として報告する義務を廃止すると発表。
 
スイス
 個人使用容認へ政府が法改正案を提出

 なお主任弁護人が担当した判例タイムズNo.369の424頁の大麻取締法違反事件の判例解説で、次のように述べているので、参考にしていただきたい。
「我が大麻取締法はいわゆる占領軍立法の一つであるが、昭和38年(法108)になって、従来の3年以下の懲役又は3万円以下の罰金という比較的ゆるやかな罰則が、選択刑としての罰金が廃止され、懲役刑も重くなって、5年以下の懲役という比較的きびしい刑罰に改正された。大麻に従来考えられていたような強い有害性は認められないと考えられている現在、なおこのような懲役刑のみを以て処罰する立法を維持することが賢明であるかは疑問の存するところである。」。

5。読売新聞2012年(平成24年)11月8日号で以下の記事(弁第65号証)が報道されており、日本に大麻取締法の制定を迫ったアメリカにおいて大麻合法化の動きが加速している。
「コロラド・ワシントン州 マリファナ合法化へ 住民投票 医療目的以外 米で初」と題して以下の報道がなされた。
5.「米大統領選と同時に行うコロラド、ワシントン両州で、マリファナを嗜好品として所持することを合法化する提案が賛成多数で可決される見通しとなった。米メディアが伝えた。医療目的以外のマリファナ合法化は米国で初めて。両州は1オンス(約28グラム)までのマリファナ所持を合法化し、一定の規制下で州公認店によう販売も認める。」

6。2012年12月20日付日本経済新聞の「英下院、大麻合法化の検討を求める報告書」と題し以下の報道がなされた。(弁第66号証)
『英議会下院の内務委員会は10日、個人による大麻など麻薬使用の合法化を検討するよう政府に求める報告書を発表した。審議会を設置し、2015年末までに結論を出すよう求めた。麻薬依存が引き起こす社会問題を抑えるためには、犯罪として処罰するよりもカウンセリングなどの対策が効果的だとの考え方が背景にある。
 内務委員長は「今行動を起こさなければ、将来何世代にもわたって薬物依存の社会的、財政的な負担に苦しむことになる」とする声明を発表した。
 ただ、キャメロン首相は同日、「現在の政策は機能しており、合法化は支持しない」と明言。英国には慎重な意見も多く、実際の政策変更に結び付くかは不透明だ。
 報告書は、すべての麻薬の個人使用について刑罰の対象外とし、中毒からの治療へと軸足を移したポルトガルの政策を「真剣な検討に値する」と 指摘。先月の住民投票で嗜好品としての大麻使用や所持の合法化が決まった米コロラド、ワシントンの2州などについても、影響の調査を求めた。』

7。2011年9月25日付インターネット「大麻マリファナNEWS」の「遂にロシアが大麻合法化へ」と題し以下の報道がなされた。(弁第67号証)記事
「ロシア麻薬管理局のスポークスマンは金曜日、『ロシアは間もなくカナビス サティバと知られる大麻が産業用と農業用に於いての栽培を正式に許可されるだろう』と発表した。9月28日に現在 法律で禁止はれている大麻の栽培を許可するかどうかを、国家反麻薬委員会に於いて決議する。
 ロシアは1961年迄は世界最大の麻の産出国で、油、食物、繊維、住宅や工業の建材など幅広く利用されていたが、同年に国連で採択された『大麻をヘロインと共に非常に毒性の強い麻薬である』と宣言した単一条約に批准した事により以後法律で禁止されている。その為ロシアは現在、世界最大の麻製品の輸入国に変 わっている。2007年には、政府は麻の植栽に関する法律を緩和。
 ロシアで違法に栽培される大麻は、極東や黒海地域などで、少なくとも100万ヘクタールの広さを有すると推定され、約2,000ヘクタールが産業用大麻を栽培するために使用されていると言う。
 スポークスマンは、『大麻の工業利用の復活が新しい雇用を創出し、違法な野生の大麻が豊富な地域で社会的緊張を減少させる』と結んでいる。 」

8。2012年2月17日のインターネットの「壊れる前に・・大麻をめぐる大新聞の社説」と題する記事(http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-b6c4.html
で以下の紹介がされています。(弁73号証)
Timely letter from ex-attorneys-general in B.C. about need to legalize marijuana - グローブ・アンド・メール紙はカナダで購読者数第2位の新聞です。今週、マリファナ合法化を呼びかける社説を掲載しました。

カ ナダ西海岸、ブリティッシュ・コロンビア州の歴代の法務長官4人が今週、州知事にあてて、大麻の取り締まりには全く意味がないとする書簡を送りました。大 麻の取り締まりはアメリカの禁酒法時代のようなもので、使用の抑制に効がないばかりか、組織暴力をのさばらせるだけになっている、というのがその主張で す。
非刑法犯罪化が望ましいのか、合法化(規制と課税)が望ましいのかなど、論じなければならない点は多く残されていますが、今のままではいけないという世論は、既に主流になった観があります。

9。ドイツのリューベック地方裁判所と連邦憲法裁判所の判例の紹介(弁55号)
 ドイツで1994年に下されたリューベック地方裁判所の判決、また、同年に下されたドイツ連邦憲法裁判所第二法廷の判決によれば、少量の非日常的な自己使用目的の大麻の所持事案は、刑事処罰の対象にならない取り扱いになっている。
 「ハシシ(Cannabis)決定ー薬物酩酊の権利?」と題する中央大学教授工藤達朗作成の判例評釈(「ドイツの最新憲法判例」信山社発行)で、同教授は次のように述べられている。
「被告人は、麻薬法違反容疑で勾留中の夫に面会し、抱擁の間に、1.12グラムのハシシの入った小袋を手渡したとして、リューペック区裁判所により、2ヵ月の自由刑を言い渡された。被告人は、量刑不当を理由にリューベック地方裁判所に控訴したところ、同裁判所は、次の理由により該当する麻薬法の規定を違憲であると確信し、基本法100条1項に基づき手続を中止し、連邦憲法裁判所に事件を移送する決定を下した。
⑴ アルコールやニコチンが大麻製品よりも有害であるのは明白であるにもかかわらず、麻薬法が大麻製品のみを麻薬としたことは恣意的であり、立法者の裁量権の限界を逸脱しているから、基本法3条1項の平等条項に違反する。
⑵ 自己使用目的の大麻製品の交付を処罰することは、基本法2条1項に違反する。いかなる食品、嗜好品、酩酊品を摂取するかについて自己の責任で決定を下すことは、人間の自己決定の基本的要素であるから、「酪酊の権利」も人間の自己決定の中心部分として基本法2条1項の保護を受ける。基本権の制限は比例原則に従つてのみ許されるが、刑罰という手段は立法目的の達成に適合しない。また、大麻が事実上非犯罪化されている国をみれば、刑罰は必要性がない。さらに、刑罰は、基本権の制限と釣り合いがとれていない。ソフトドラッグとハードドラッグを区別していない点も、比例原則に反する。
⑶ 大麻製品による「酩酊の権利」を禁止された市民が、より危険なアルコール摂取を強制されることになるから、基本法2条2項第1段の身体の不可侵性に反する。
 これに対して、連邦憲法裁判所第2法廷は、問題となっている麻薬法の規定の合憲性を認めたが、少量の大麻製品の非常習的な自己使用目的の行為については、訴追を免除すべきであると判示した。グラスホフ裁判官とゾンマー裁判官の少数意見がある。前者は多数意見の結論に同調するが、後者は麻薬法の規定を違憲と断ずるものである。」
 さらに、工藤達朗中央大学教授が、次のように指摘されていることを十分に考慮していただきたい。
「なお、わが国でも、大麻取締法の合憲性について、裁判でしばしば争われてきたところであるが、1985年に最高裁判所が大麻の有害性を肯定して以来、実務上はすでに決着がついたとみなされているようである。学説上もこの決定に対して正面から異を唱えるものは存在しない。連邦憲法裁判所の本決定は、この再検討を促すものであろう。」

10。最高裁判所{最高裁昭和60年(あ)第445号同年9月10日第1小法定決定・裁判集(刑事)240号275頁}は、大麻草の有害性を認定しているが、その具体的内容は、自動車運転に対する影響のみである。自動車運転における酒やその他の薬物の規制はすでに道路交通法で規制されており、それ以上に大麻草つまり大麻を規制する具体的理由は存在しないものである。                      
  例えば、酒気帯び運転や薬物の影響によって正常な運転ができないおそれのある運転は、道路交通法六五条、六六条等特別の罰則があるのであるから、具体的な被害が発生しない前段階でもって、薬物使用を規制することは、一種の予備罪もしくは予防拘禁と同様であり人権保障を第一義とする社会にあっては極力さけなければならないのである。

 大麻草を含めて薬物の所持、使用に対する処罰は、カーター大統領が、連邦議会に対する薬物乱用に関する1977年の大統領教書でもいっている様に、「その薬物使用による害よりも大きな害を与えてはならない」のである。
もとより弁護人は、薬物使用を野放しにせよと主張しているのではない。むしろ現在の薬事行政は具体的な被害が立証されていない大麻草を厳しく処罰する一方で、過去キノホルム、クロロキン、チクロ等有害物質を含有する合法的な薬物による悲惨な薬害事故や最近では合法的な抗うつ剤の副作用によって死傷事故を引き起こしているのであり、薬物に対する正確な情報の提供と適切な規制は極めて遅れているといってよい。現在必要なことは、第一に大麻草を含めていろいろな薬物に対する正確な調査と情報提供であり、その上での有害な薬物に対する適切、有効な規制である。
 大麻草つまり大麻は有害ではないばかりか、有益であり、そもそも刑事罰をもって規制しなければならないものではない。このような見解は、弁護人の独自の見解ではなく、日本においても以下のようにそれを裏付ける意見も出されているのである。
 著名な経営コンサルタントの船井幸雄氏が、昨年8月12日に株式会社ビジネス社から「悪法!! 大麻取締法の真実」(弁46号証)という本を発行されている。その本の「はじめに」で船井幸雄氏が次のように述べられている。
『本書をまとめるまで、私は「大麻取締法は悪法だ」と思っていました。
現状では、確かに「天下の悪法」と言ってもよいような運用がなされています。しかし、調べるうちに大麻産業は「金の卵」であることがよくわかりました。とりあえず上手に運用すれば、日本だけで10兆円〜30兆円も経済効果をあげるそうです。農家はもとより、国民も日本国も助かるし、企業としてもJT(日本たばこ産業株式会社)が5つくらい生まれる以上の効果まではすぐに行きそうです。本書ではそれらの実情を、できるだけ客観的に示してみます。 
 このように言いましても、私は大麻という植物を、現実にはみたことがありません。当然大麻草からできた現物や製品は麻製の肌着くらいは持っていますが、それ以外はほとんど見たことも手に取ったこともありません。ただ、大麻には縁がありそうです。大麻のことを少し詳しく聞いたのはたぶん、1954年(昭和29年)ごろだと思います。当時、京大の農林経済学科の学生だった私は卒業論文のことで、先輩である指導教授に相談に行きました。そのとき、教授から言われたのです。
「船井君、いま日本の農業は衰退期に入ろうとしているね。それを盛り返し、さらに日本と日本人の精神を建て直すのには、僕は大麻がいちばんだと思うんだ。しかし1948年(昭和23年)に「大麻取締法」が制定されたために、いまはとりあえずいっさいタッチできなくなった。悲しいことだ。これが農林経済学を専攻する学生のベストの卒論のテーマなんだが、現状では如何ともしがたい。他の興味のあることを卒論では書きなさい」とその教授はアドバイスをしてくれたのです。
 そんなことがあり、大麻のことは、その後もたえず気にはなっていたのです。』

 さらに、最近つまり、2013年(平成25年)2月10日付け朝日新聞で、「大麻活用高まる関心 法規制外 良質な油・丈夫な繊維 大麻取締法による規制のためイメージは良くないが、古来、日本人の生活に欠かせなかった植物、大麻。法規制外の丈夫な繊維や良質な油の用途は広く、栽培や利用への関心が高まりつつある。」「マヨネーズが人気」「種子や茎 幻覚成分含まぬが栽培免許の壁」と題する報道がなされた(弁72号証)。
 このように今まで大麻を悪いものとして報道してきたマスコミの姿勢が変わりつつあり、大麻の活用に対する関心が広まっている。
 国民の健康の増進と環境の保全のためにも大麻規制のあり方について根本的な再検討をする時期に来ているものである。


中山康直氏による最終意見陳述内容

大麻の復活は大和魂の復活である。

平成24年2月7日の初公判から1年以上にわたって、裁判所という公正な審議の場において、法廷証言や証人尋問として、占領政策により、ここ数十年誤解されている大麻の真実を伝え、日本の伝統文化や未来社会にとっても、とても大切な資源作物であることを訴えて参りました。
裁判の進行とともに、今や世界的にも大麻の有益性が理解され、古い規制の緩和により、次々と各国で合法化や非犯罪化がなされるなど、大麻に対して新たな基準や枠組みが始まり出した国際情勢の中、大麻産業の専門家として、最も新しい真実の情報を誠実に証言して参りました。
厚生労働省の大麻に対しての見解は、米国の取締り時代の古い情報に基づいた不正確なものであり、厚生労働省の担当者も古い不正確な情報であることを数年前に認めているにも関わらず、未だに新しい情報に変えるという重要な公務がなされていません。それにより、裁判所や検察側の大麻の認識も古い情報を支持しており、正確ではない状況は明らかです。

裁判所に提出した「大麻産業の業務に関する実績と経緯」にもありますように、今まで、20年以上、大麻産業の活動に尽力し、15年間にわたり産業用大麻の業務にかかわり、その中で、実質的に大麻取扱者として、大麻栽培業務に従事し、様々な調査研究や実績を積み重ねてきた経緯があり、その上で、2011年の3月11日に起きた未曾有の災害である東日本大震災後、被災地復興支援にボランティアで訪れた経験がきっかけとなり、災害に強い環境的な社会づくりのためや放射能汚染の解決にむけて、現日本において、とても貴重な産業用大麻の種子を殖やしていかなければ、将来的に日本の社会や永きにわたって続いてきた素晴らしい文化が途絶えてしまうという危機的な状況を理解し、日本の未来社会に向けての国益のためにも産業大麻の必要性を確信して、緊急事態であるという意識から、経験のある自分に出来る日本復興活動の一環であるという認識のもと、必要最小限に限って、個人的に管理して栽培したものであり、心情的にも、みだりだという認識や自覚はなく、犯罪として故意であるとの認識もありませんでした。

現に今回、必要最小限に限って、栽培した行為は、栽培理由や栽培量からいっても、今までの栽培業務と比較して極めて少量の範囲内であり、静岡県からの栽培場所の移動により、東京都に対して、大麻取扱者免許申請も行っていることから、形式的に免許を持たなかった栽培行為であり、みだりであるとの認識は全くない状況です。
東京都が大麻取扱者免許を交付していれば、今回逮捕されることはなかったという形式的に免許があるかないかという論点に基づき、行政訴訟も行っていることからもそのみだりではないという認識は明確であると思います。

今まで20年以上、産業大麻の業務や活動にかかわってきて、様々な大麻に関する事実に接する中で、全く無害だとは思いませんが、大麻が直接的に有害であるという事実はなく、どうしても大麻が有害だとは思えません。
また、この法律は戦後すぐの1948年にGHQ占領下における制定であることから、古い解釈であり、現代社会には馴染みにくくなっており、法律による弊害もうまれている事実は明らかです。
さらにこの法律が占領軍から押し付けられたことにより、立法目的が不明確で制定の手続きにも問題あることから、当初から矛盾があり、最近では世界情勢との比較でも明らかですが、その矛盾も拡大しています。(法律は植物を取り締まっているが、法律の運用は薬理成分であり、所持と使用の法的基準など矛盾点が多い)

今回の事件について、不明確な被擬事実、明らかな虚偽事実と違法捜査、大麻取締法の構成要件である「みだりに」ではない事実、大麻取締法の違憲性、大麻取締法の立法手続きの不備事実、有害性の根拠の不正確の事実などを提示し、一貫して無罪を主張してきました。
裁判官におかれましては、1年以上にわたる大麻裁判において、実際に大麻を研究していた立場からの素直な訴えとして、一般的には見えにくくなっている大麻の真実の情報を法廷証言や法廷に提出した証拠資料という形で審議して頂けたと思いますが、その上で、もし、裁判官が未だに大麻を危険な麻薬だと思っているのなら、やむをえません。私の力不足ですので、どうぞ死刑にして下さい。
または、大麻は日本の伝統であり、素晴らしい農作物であると理解したならば、今までの古い常識及び前例や判例に左右されることなく、無罪にして下さい。
人類や社会に恩恵をもたらしてくれる大麻を規制する国家であってはならないと日本国民のひとりとして、心から進言致します。

戦後、一方的に押し付けられた大麻取締法により、日本全国の大麻産業は衰退していき、大麻農家も減少の一途をたどりました。
当時の日本では、大麻の乱用や大麻関係の問題などは、ほとんどなく、むしろ縄文時代から続いてきた伝統植物であり、貴重な農作物である大麻を国民が占領立法から守ろうとしたのです。
戦後の高度経済成長で物質的には便利になりましたが、その便利さと引き換えに、環境や健康が悪化し、日本の良き文化が失われていったのも確かなことです。

第二次世界大戦終盤、戦況が悪くなり、もはや敗戦か奴隷しか選択はないという絶体絶命の状態の中でも、日本は奴隷を選択する民族ではなく、最後まで戦い続けました。
この戦争は、強引な欧米諸国による世界支配を日本が阻止した戦いであり、アジア地域の植民地政策にピリオドを打ち、結果的にも全世界の有色人種の未来を担った戦いだったのです。
「神風特攻隊」約6000名の前途有望なる若き志士が、将来の日本を憂い、桜のように散っていきました。
「一億総特攻」日本民族一丸となって、もちろん送り出す側も特攻精神です。
戦わなくても亡国、戦っても亡国であれば、戦わずしての抵抗なき降伏は、日本民族永遠の亡国であり、奴隷となる。ならば、護国の精神に徹して、死中に活路を見いだすことで、日本の精神を残せば、たとえ戦いに敗れても、100年後、1000年後、我らの子孫は必ずや日本を復活させ、再起すると信じて旅立った先人たちの大和魂を絶対忘れてはなりません。
私たちが今日あるのは、先人たちの大和魂のお陰様であることもお忘れなきように・・・

占領政策で押し付けられた大麻取締法により、伝統文化や精神文化が封印されていきました。だからこそ、大麻の復活は、先人たちの悲願であり、素晴らしき日本の自立となるのです。
大麻が麻薬などと言う恥ずべき偽りから脱皮し、今こそ、大麻の開放に向かう取り組みを日本人が知り、実践していく本来の使命を達成して参りましょう。
大東亜共栄圏ならぬ世界麻共栄圏の夢が大麻の開放によって、現実のものとなるのです。
次の詩には、敵地に赴いていった、ひとりの若き玉砕兵の心底が刻まれています。

この詩を読んで、貴方の大和魂が目覚めることで、真の日本の復活を願ってやみません。 
合掌!!

  もし玉砕して そのことによって
  祖国の人たちが少しでも 生を楽しむことができればと
  せつに祈るのみである 
  遠い祖国の若き男よ 強く逞しく朗らかであれ 
  なつかしい遠い祖国の若き乙女よ
  清く美しく健康であれ


検察官による論告と求刑

論告要旨

大麻取締法違反                        被告人  中山康直

第1 事実関係
本件各公訴事実は、当公判廷で取り調べらえた関係各証拠により、その証明は十分である。
なお、被告人は当公判廷において、「正当な理由がある」「みだりには所持しておらず、またみだりであることの認識もない」旨陳述し、弁護人は①「社会通念上正当な理由があり『みだりに』には当たらない」、「大麻取締法は違憲である」②「本件大麻及びその鑑定書は、違憲収集証拠であり、証拠能力が認められない」として無罪を主張する。しかし(1)本件所持に正当な理由がないこと及び大麻取締法違反が合憲であること並びに(2)前記証拠が違憲収集証拠には当たらない事は明らかであるからこの点につき検察官の意見を述べる。

第2  争いのない事実および客観的に明らかに認められる事実
1 被告人は平成9年3月31日から平成10年12月31日まで、及び平成11年1がつ27日から平成14年12月31日まで、大麻取締法違反5条に規定する大麻栽培者として、静岡県知事の免許を受けた(甲9)
しかし被告人は、平成15年1月1日から本件犯行当日の平成23年11月29日まで、同知事から、大麻取扱者の免許を受けていなかった。(甲7、甲9)
2 被告人は平成10年3月21日ころまでには東京都大島町に住所を移した。(甲25)
被告人は、同年12月21日、東京都に大麻研究者免許を申請したが平成11年3月3日、不許可通知を受けた。また被告人は平成11年3月4日に、東京都に大麻栽培者免許の申請を行い同月8日に受理されたが、同月31日不許可通知を受けた。(甲27)
被告人は大麻取扱者の免許を受けずに、大麻を栽培することが違法であることを認識しており(乙4)、大島町所在の自宅で大麻栽培を行うためには、東京都知事から免許を受ける必要があるという認識も有していたが、当該免許を受けることのないまま自宅敷地内で大麻を栽培し、この一部を吸引使用した(甲5、乙4被告人供述調書(1)62頁)。
3 (※ 略)
4 警察が前期大麻と認められるもの4点の鑑定を行ったところいずれも大麻を含有することが判明し、その重量は合計27.509グラムであった(甲15、17,19、21)

第3 大麻取締法が合憲であり、また被告人による大麻の所持に正当な理由が認められない事

1大麻取締法の合憲性
大麻の有する薬理作用が人体に有害な影響を及ぼすことは、公知の事実であり、このことは最高裁判例(最決昭和60年9月10日裁判集刑事240号275頁、最決昭和60年9月27日・裁判集刑事240号351頁)に照らしても疑いのないところである。
したがって、国会が大麻の弊害に着目し、予防的見地から厳しく規制することにも合理性があり大麻取締法違反は合憲である。
2  正当な理由がないこと
大麻取締法24条の2第1項における「みだりに」とは、社会通念上正当な理由があると認められない場合を言い、具体的には、日本国内において日本の法律に違反することを言う。
前記のとおり被告人は、大麻取扱者等の免許を受けておらす、同項に違反することは明らかである。したがって本件所持に社会通念上正当な理由があるとは認められず、被告人は同項における「みだりに所持した者」に該当する。

第4  違法収集証拠には当たらない事
1 弁護人は、①本件捜索差押許可状は、警察が被告人を含む7名のグループが共同で大麻を所持したとの事件像を描いた上、同7名の同一のグループとして逮捕するために、疎明資料をねつ造し同許可状を搾取した疑いがあり、②同許可状はその被疑者名が不特定で③同許可状の執行は事前の提示を行わずになされ、④他に存在する捜索差押許可状3通が示されていない点に重大な違法があると主張する。
2 しかし、以下のとおりいずれも理由がないことは明らかである。
(1) 弁護人はインターネット上の記事(弁5)を根拠に上記主張を言うようであるが、当該記事は伝聞証拠に過ぎない上そもそも同期時には「被告人を含む7名が大麻取締法違反で逮捕された」とあるのみで、この時期の存在から上記主張を行いのは理論上飛躍がある。上記弁護人の主張は憶測の域を出ない。
したがって同許可状を搾取したとの弁護人の主張に理由がないことは明らかである。
令状執行状況について
ア 刑事訴訟法222条1項、110条による捜索差押許可状の呈示は、手続きの公正を担保するとともに、処分を受けるものの人権に配慮する趣旨に出たものであるから、令状の執行に着手する前の呈示を原則とすべきであるが、相手方に捜索差押許可状執行の動きを察知されれば、差押対象物件を破棄隠匿されるおそれがある場合には、警察官らが令状の執行に着手して入室した上その直後に呈示を行うことは、法意にもとるものではなく、捜索差押えの実効性を確保するためにやむを得ないところであって、適法と言うべきである。(最決平成14年10月4日刑集56牧8号507頁)
イ 本件許可状の呈示を行った警察官祖父江公利(以下「祖父江」という)証言によれば、本件捜索差押許可状の執行状況は、以下のとおりである(祖父江証言3~7頁)承認が被告人方に到着した際、被告人方玄関は、ドアがずれて開いていた。証人はノック等をせずに、ドアを開けあいさつの声をかけて被告人方に入った。すると、被告人が2階にいたので証人は1階から被告人に対し自分たちが警察であることと、2階に行って説明するのでその場を動かないように伝えた。証人は2階の被告人のところまで行って前記許可状を示した。証人は事前にノックなどをして警察であることを伝えると被告人等に違反薬物等の証拠を窓からなげすてられるなどの証拠隠滅を図られるおそれが高いと考え上記措置を取った。
ウ 祖父江証言は、具体的で、弁護人からの反対尋問を受けても揺るがず一貫している上、ノックをせずに被告人方に入って2階の被告人のもとまで行ったことなど、ともすると自己に不利な内容の証言もしておりその信用性は高い。
エ 本件においては、証人が考えていた通り、事前にノックをして警察官であることを被告人等に伝えれば、大麻取締り違反の前歴もある被告人等によって、短時間のうちに本件大麻の隠匿廃棄がなされる恐れが大きかった上、被告人方に入った後も2階にいた被告人がその場を動けば同様に本件大麻の破棄隠匿のおそれが大きかったものである。
したがって、上記令状執行は、事前に捜索差押許可状執行の動きを察知されれば、差押対象物件を破棄隠匿するおそれがあった場合において、捜索の実効性を確保した上で、可及的速やかに被告人に令状を呈示し、大麻等の捜索にあたったものと言えその手続きに何ら違法は存在しない。
オ 被告人は「警察官がいきなり2階の自分たちのところまで来て、令状を示した後大麻等の捜索が始まった」と述べるが、(第4回被告人質問(1)19~24頁)上記信用できる祖父江供述と矛盾するうえ仮に被告人の主張するような状況だったとしても捜索の実効性を確保したうえで可及的速やかに被告人に令状を呈示し大麻等の捜索を行った状況に変わりはなく何ら違法は存在しない。
(4) 被告人方の捜索においては、被告人方を対象とした本件捜索差押許可状1通のみが問題となるのであって、ほかの許可状を問題とする理由はない。
3  以上のとおり本件捜索差押手続きに何ら違法は存在せず違憲収集証拠であるとの主張は理由がない。

第5 結論
以上のとおりであるから被告人には大麻取締法違反が成立する。

第6 情状 
1 被告人は、免許を有さずに大麻を栽培所持すれば違法であることを認識しながら、本件犯行を敢行しておりその身勝手極まりない動機に酌量の余地はない。
2 本件大麻は、27グラムに及ぶものでその所持量は軽視できない。また被告人は自ら大麻を栽培し、乾燥させて吸引使用しているものであって、被告人の大麻に対する親和性も顕著である。
3 被告人は平成8年に大麻取締法違反で起訴猶予処分を受けた後、大麻取扱者免許を取得した。しかし、同免許失効後、被告人は違法と認識しつつ、大麻栽培を行い大麻を所持したもので、被告人が法律を順守する規範意識に欠けていることは明らかである。
被告人は「自己の考えにそぐわない法律のほうが悪い。そのような法律には違反しても構わない」などと考えて本件犯行に及んでおり、この点に関する反省は当公判廷においても全く見受けられなかった。
被告人は「今後は免許を得て大麻栽培等を行う」旨述べるが、上記被告人の態度などからして、免許を得られなかった際などには本件同様の犯行を敢行する可能性は極めて高い。
4 大麻を含む薬物事犯の撲滅が叫ばれている今日、一般予防の必要性も高い
5 したがって、被告人に対しては厳格な対処が必要である

第7 求刑
以上の諸事情を総合考慮し、相当法条を適用の上、被告人を懲役1年に処し、大麻4袋(平成23年東地第57号符号1~4)を没収するを相当と思料する。  

以上


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